恒心文庫:不憫の結晶

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本文

からさんは変わってしまったんです
僕達は別に殺害予告されようが誹謗中傷されようが事務所に悪戯されようがからさんと共に過ごすことができれば平気だったのです

ある日しばき隊というヤクザがからさんに接触してきました
そして最終的にはからさんは左の弁護士になってしまいました
僕たちの理念とは苦しんでいる人を救う為に助力を尽くすと言うものでした
この時に僕たちは気がついてしまったのです
僕たちは唐澤貴洋の存在がカルマの塊であるが為にここに集ったのだと
不憫の結晶である唐澤貴洋を護る為にクロスに入社したことを思い出したのです

そして今オラついた連中とつるんでいる悲壮感のカケラもなくなってしまったレイシストに変貌した豚に献身する意味など無いと言うことに気がついてしまいました
僕は山本君と話し合いました
そして事務所を去ることを決意したのです

これに豚は猛反発しました
自分は実質の所長の息子だ お前らとは違う などとブヒブヒ喚いていました
挙げ句の果てにはしばき隊を使ってしばくぞ等脅迫まがいの事を言い出したのです
洋さんもこのおよそ社会性のあるとは言い難い言動には困惑していましたが豚の親は豚
親バカの豚はただただ豚の息子を甘やかし庇護するだけでした
辞められては困る これからも息子を助けてくれいなどとこれまたブヒブヒ醜い肥満体が鼻息荒く鳴いていました

困った僕達は洋さんから与えられた仕事の関係で知り合った知人の元公認会計士の元を訪ねました
そのお方は優しく しかし威圧感のある笑みを浮かべながらそのまま整った顔の筋肉をピクリとも動かさず
なるほど と黒いモミアゲをいじりながら頷きました
私に考えがある 君たちは何も心配しなくて良い と言うとどこかに電話をかけました

翌日しばき隊のメンバー全員が東京湾に遺体で浮いているのが発見されました
しばき隊の連中もまさか自分たちがしばかれるとは夢にも思ってなかったでしょう
水分でぶくぶくに太ったにも関わらずその顔には恐怖が見えており遺体の損傷は非常に激しいものだったそうです
唐澤貴洋だけ発見されず
今も行方不明になっています

こうして事務所を無事脱退した僕と山本君は今は普通の事務所で普通に働いています
僕と山本君は困った性分で
もしかしたらからさんが苦しんでいるのかもしれないと思うとまたからさんのお世話がしたくなってしまっているのです
居ても立っても居られなくなり黒モミの所を訪ねました
黒モミはいつもの笑みのままで指をパチンと鳴らすと屈強な黒服の男達が何やら大きなドラム缶を運んできました
中にはからさんと思わしき死体が入っていました
僕達は喜びに包まれました
最高に気の毒で悲しいからさんがそこに在るのです
これからはずっと一緒だからね からさん…

やっぱりこの二人は病んだ特殊性癖の歪んだ人間だったモリね
手を取り合ってはしゃぐ二人を尻目に
黒モミはこうなる事を知っていたかの様に邪悪な悪魔の笑顔で高々と笑うのであった

タイトルについて

この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

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