恒心文庫:おセックス禁止令

2022年8月14日 (日) 01:25時点における>チー二ョによる版

本文

1. おセックス禁止令
所長の山岡が神妙な面持ちで朝礼を始めた。
「おはようございます。すでに所員のみんなはご存知かもしれないが、最近世界で大変懸念すべき疫病が流行り始めている。サル症と呼ばれる感染症だ。性感染症の一種で同性間の性交渉によって感染する。そこで、当事務所でもサル症についての情報収集と感染予防対策を徹底したい。当面の間、当事務所の所員の一切の性交渉を禁止する。おセックス禁止令だ」
八雲法律事務所始まって以来の重大決定だった。
「八雲の存在意義が無くなってしまう」と杉本は抗議した。
一人男泣きし始めるのは町田であった。
平静を装うのは千葉と菊池だったが、表情は少し強張っているように見えた。
突然絵画を描き始めたのは小林だった。
阿部は、がっくり肩を落とす柏原と畔柳を慰めていた。
田村、笠置、長野は互いの肩を抱いて円陣を組み、それぞれが涙を浮かべていた。
「八雲法律事務所始まって以来の最大の危機だと思って気を引き締めてもらいたい。サル症の封じ込めにはこの方法しか無いのだ。」
山岡はそう言って朝礼を終えた。

2.おセックス禁止令解除
「山岡さん!もうオナニーだけじゃ抑えきれません!」
「代表!勃起が続いて仕事ができません!ご決断を!」
おセックス禁止令が発令されて1か月、八雲法律事務所の所属弁護士たちは窮地に陥っていた。
性欲を所長やハッテン場で出会った男にぶつけ、そのエネルギーで仕事をするというサイクルが回らなくなってしまったからだ。
山岡は所員たちを見渡した後、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「みんながこの1か月、サル痘が発症していないことを確認してる。よく頑張ってくれた。
サル痘の流行は収束していないが、本日午後5時をもっておセックス禁止令を解除する。
ただし、外部者とのおセックスはまだ禁止だ。
それでも解除を見越してホテルのスイートルームを4泊とっておいた。お盆は皆でホテルで過ごそう。
もちろん、実家などに帰りたい者は帰っていい。その間、おセックスをしなければ大丈夫だ。」
所員たちは歓喜に沸いた。もちろん誰も実家などに帰る者はいない。
祝日の前日の仕事終わり、法律事務所の所属者全員がホテルに向かった。
そこでワインを飲みながらビデオカメラを回す阿部通子、デッサンをする小林尚通を除き、所長を含めた10名が全裸になった。
所長の上下の口はたちまち怒張で貫かれ、それに与れなかった者たちは彼ら同士で交わり始めた。

サル痘対策のためのおセックス禁止令解除が、サル痘クラスターのフラグになる、となればよくある話だが、
さすが山岡代表、サル痘対策はバッチリだった。
しかし問題は発生した。あまりに勢いよく欲望を解放し、激しく交わったため、
元々肛門が緩く、それに慣れていた山岡、そして記録係の阿部・小林を除く9名の肛門が急激に緩くなったのである。
着衣して朝食や昼食をとったり、ホテル内のちょっとした運動施設などを利用したりすることもあったが、
そのどこでも、「ガス」を出そうとして「実」を出す者が出てしまったのである。
二度とこのホテルは使えないな、と一瞬思ったが、IT法務は「クラウド」のようなフワフワしたものではなく、
実を伴って世間に評価されるものにしなければならないから、実にこだわるのは間違ってないか、と山岡は思ったのだった。

タイトルについて

続編は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。

この作品について

2022年5月以降、欧州・米国等でサル痘の集団感染が問題となっている。感染者は男性で、多くは同性間の性的接触で蔓延しているという報道がされたことから。

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