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恒心文庫:教団

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

今日もまた一人 こちらを伺う者が増えた
24時間365日等距離に保たれる視線からは、なんの感情も読み取れない
湿度を持った複数の視線が、何を訴えるでもなくこの身体を包囲する
「このままここに居ても埒があかない」
毎夜この結論に辿り着き、部屋を追われるのである


肌寒い 予想以上に風が強い 
しかしここで上着を取りに戻れば彼らに囲まれる
仕方ない 憤りを抑え、張り付くような冷気の中歩みを進める
慣れた道を目的もなく彷徨う 繁華街を抜け、そこそこ大きな公園のベンチに腰掛ける
人通りはほぼない、落ち着ける場所だった
一人暮らしだと思っていたあの家も、奴らが監視していると気づいてからは長居できずにいた
「はぁ」
彼らは目的も実態も知れない集団だ 
自分を見て笑っているのか 蔑んでいるのか
霧の中に一人投げ出されたまま、日夜不眠不休の鬼ごっこを続けているようでやるせない
先の見えない鼬ごっこの今後を思うと陰鬱な気に包まれそうになる
なぜ自分が? 何処の誰がこんな事を始めた?
この問題はどちらかが死ぬまで解消されない、そんな気がしている

「チリンチリン」
闇夜の公園の周りを無灯火の自転車がベルを鳴らしながら走り抜ける
「囲まれた」 そう思った時はもう遅いのが実情だ
無数の立ち漕ぎ男が公園を包囲する
暗がりで一人ひとりの顔は視認できないが、彼らはほぼ同じ顔をしている、直感がそう告げていた
舌を出し、道化師の様におどけてみせる男達
一見温和にも見えるその醜悪な表情がいつもの強い嫌悪を生む
男根囲いレイプが始まるのも時間の問題だ
右手で胸元のポケットに撮影を開始したスマートフォンを忍ばせ、左手で鞄からこの日の為に購入した武器を取り出す
反撃の狼煙を挙げるのは今しかない

「きっしょ 死ねやゴリホーモ共」

無人の公園に一つの銃声が反響した

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