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恒心文庫:嘆きの聖夜

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

男が男に彼女を取られるのと
男が男に彼氏を取られるのと
男が女に彼女を取られるのと
男が女に彼氏を取られるのと
女が男に彼氏を取られるのと
女が男に彼女を取られるのと
女が女に彼氏を取られるのと
女が女に彼女を取られるのと

どれが一番悲惨だと思いますか

彼は泣いていた
最愛のひとが今 隣にいないからだ
彼の乳首はなぜ肥大したのか あの人のためだ
彼の身体はなぜメスイキしやすいのか あの人のためだ
彼の筋肉はなんのために鍛えられたのか あの人のためだ

そうまでしてきたのに
そうして生きてきたのに
あの人が いない いないのだ

事は単純だ
あの人は 自分に飽きた
ただそれだけ それだけの事
そうしてあの人は元の鞘へと納まった
インセストなどと定義される関係だが
二人の愛の前では些細な事だ

そうだ あの人は幸せそうだ
そう思うと 股間が踊る
彼はそれだけで満足だった
今日この聖夜までは

寒波の影響で 道行く人々は皆寒そうだ
だが皆 隣に寄り添う誰かがいる
皆 一人ではない 自分を除いて

日本刀を持った青年が通り過ぎる
彼の隣にもまた 誰かがいた
見覚えのない 誰かだが お似合いで幸せそうだ

跛足の中年が通り過ぎる
彼は愛しそうに誰かを抱えていた
人ではないのかもしれないが しかし幸せそうだ

眼鏡の中年が通り過ぎる
制服を着た 多くの人がその周りにいた
涎を垂らしながら 支えられ幸せそうに歩いていく

そして 彼は見た
彼が愛した人を かつて彼を愛した人を
その人は愛する人と二人 幸せそうに歩いていく
だが その隣にいるのは 自分ではない

そう あの人の隣に 自分はいない
そう 自分には誰もいない いないのだ
かつての勤務地の前で 彼は一人泣いた

男が男に彼女を取られるのと
男が男に彼氏を取られるのと
男が女に彼女を取られるのと
男が女に彼氏を取られるのと
女が男に彼氏を取られるのと
女が男に彼女を取られるのと
女が女に彼氏を取られるのと
女が女に彼女を取られるのと

どれが一番悲惨だと思いますか

彼は思う そんなものは決まっている
愛する人を奪われる
その苦痛に 差などあるのか
ある訳がない あってはならない

木枯らしに乳首を晒したまま 彼は一人泣き続けた

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