恒心文庫:唐澤貴洋の一日
本文
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パチパチパチ・・・
10:00 起床
10:01 二度寝
10:03 二度目の起床
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目が覚めた。はっきりとした感覚はない。体がだるいので二度寝をした。しかし上手く寝付けず起きることにした。
「・・・・・・」
「・・・?」
しばらくしてから脳が目覚める。
今まで全く知らない部屋の、知らないベッドで、知らない空気を吸って寝ていたのか?ここはどこだ?俺はここで何をしているんだ?
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「当職はもう帰るナリよ。」
昨日俺は山岡にそう言い残し先に家路についた。いつもと同じ、日常の一風景。いつもの角を曲がった先には・・・
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思い出せない。何がどうしてここで寝ているのかまるで覚えていなかった。
俺は薄い水色の、病衣のようなガウンを着ていた。サイズはちょうどいいくらいで、半袖だ。
ここは病院だろうかと一瞬思ったが、病院の雰囲気ではなかったし、部屋には今乗っているベッドとタンス、ドアノブ式のドアがあるだけで、五畳半ほどのスペースしかない。
とりあえず何かしらの手掛かりがないか、タンスを探る。中には鍵が一つ置いてあるだけで、他には全く見当たらない。
ドアを開けようとしたが、鍵がかかっているのだろうか、ビクともしない。
体当たりも試みたがそれでもダ
2
パチパチ・・・
11:00 起床
11:14 脱糞
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目が覚めた。はっきりとした感覚はない。だが、朦朧とした意識の中で見上げた天井は慣れ親しんだものではなかった。
「・・・・・・」
「・・・?」
少ししてから脳が目覚める。
天井は知らないままだ。
起き上がるとまたもや見知らぬ光景が寝起きを直撃する。
ここはどこで、俺はなにをしているんだろう?どうしてここへ来て、寝ていたのだろうか??
}
「当職はもう帰るナリよ。」
昨日俺は山岡にそう言い残し先に家路についた。いつもと同じ、日常の一風景。いつもの角を曲がった先には・・・
}
なぜここで寝ているのか、最も近い記憶を探ってみるが見当もつかない。ここに来た過程が記憶になかった。
俺は薄い水色の、病衣のようなガウンを着ていた。サイズはちょうどいいくらいで、半袖だ。
ここは病院だろうかと一瞬思ったが、病院の雰囲気ではなかったし、部屋には今乗っているベッドとタンス、ドアノブ式のドアがあるだけで、五畳半ほどのスペースしかない。
とりあえず何かしらの手掛かりがないか、タンスを探る。中には鍵が一つ置いてあるだけで、他には全く無い。とりあえずドアから外へ出ることにする。
ドアノブに鍵穴がついているのが見える。恐らくこの鍵で開くだろう。
キィ~という新品の音を立てながら開く。
上から見ればTの字になるような空間に出会う。左側には便器が、右にはドアがある。
俺はちょうど便意を催していたので便器に座り排便を行った。
排便を済ませてからドアに向かう。ドアはタンスにあった鍵で開いた。
3
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パチパチ・・・
11:18 A・K
11:57 KTK
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今度は広い空間に放り出された。学校の体育館ほどの広さで、長方形だ。
「目を閉じて、蝋燭の炎がゆらゆらと揺れているところを想像してください。」
突然の電子的な声に驚いたが、どうやら奥の壁に取り付けられているスピーカーからのものからのようだ。
しかし、何を言ったのか聞き取れはしたが、理解が追い付かない。
「お前は誰ナリ!当職は弁護士だ、お前には説明する義務があります」
「もう一度だけ説明をします。目を閉じて、蝋燭の炎がゆらゆらと揺れているところを想像してください。」
どうやら話すつもりはないらしい。そもそもスピーカーの向こう側に人がいるかどうかすらも怪しい。
言われた通りに目をとじる。蝋燭は誕生日に父が用意するケーキぐらいでしか見る機会はないが、その火を息を吹きかけて消す前の様子を想像する。
「火が爆発するところを想像し、目を開けてください。」
蝋燭やケーキを巻き込んで俺の炎が爆発する。そして目を開ける。
俺はどうやら自然に座禅を組んでいたらしい。だが、それを奇妙な事とは思えなかった。さらに奇妙なことが起こっていたからだ。
俺の体がゴムまりのように座禅の状態でバウンドしているのだ。半分パニックになり、身を前に傾ける。バウンドしながら俺の体はその方向に進んだ。
「自分に羽が生えたところを想像して、空中で浮遊状態をとってください。」
スピーカーの言うとおりにする。私の動きは床から一メートルほど離れた高さで止まった。
「これは何ナリ!?説明するナリ!!」
「十秒後に目の前に敵が現れます。敵に銃を構え、撃ち殺すところを想像してください。敵は出現から20秒後にあなたに対する攻撃を開始します。」
やはり理解が追い付かない。敵とは何なのか、この状況はなんなのか、何がどうなっているのか、訊きたいことは山ほどあったがそれでも言うとおりにするしかない。
ガシャン。
部屋の中央から、檻にいれられた男が現れる。男の手にはオランジーナと拳銃が握られている。目隠しをされているのだろう、こちらには気づいていないが銃で誰かを撃とうとしている。私だろう。
目を閉じ、スピーカーに言われた通り男に意識を向ける。もうすぐ出現から20秒だ。
ドチャッ。
肉と骨のはじける音がした。目を開くと男は檻の中で頭から血や臓器を吹き出しながら倒れていた。手に握られていた銃はもう離されており、オランジーナは檻の隙間から抜け出てこちらに転がってきている。
今開けると炭酸があふれてしまうであろう。
人を殺したという感覚はなかった。スピーカーの言うとおりにしただけであって、俺は目を閉じていたから死ぬ前に何が起こったのか分からなかった。
目の前で死んだこの男に対する情もなかった。俺とは何の関係もないし大袈裟に言ってこいつが死んだところで俺は嫌な思いをしていない。
4
「40298号、おめでとうございます。貴職を尊師として認めます。」
スピーカーが無機質な声で俺への称賛と思われる言葉を贈ってきた。いい気分になってきた。男のオランジーナを拾い上げ、プシュッという軽快な音とともにキャップを外す。あふれてきた分を気にせずに口に含み、喉を潤す。
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パチパチ・・・
12:45 尊師個体2783k確認 厳選を開始
27:83 優しい世界
5
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ギイイイイイイン
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27
俺の名前は長谷川亮太。ネットで炎上しとる社会人や。炎上して、皆から嫌われてるけどネットはやめられない。病気なんやろうな。
そんな話はおいておくとして、今俺が気になってるのは長谷川亮太のことや。俺やけど俺やない。ネットでの俺の事や。
今じゃ卒業写真やら何やらで俺の顔や行動はネットに記録されている。それらを基にした俺がネットで構築されてるんや。
ネット住民はそれをハッセ・ユニットって呼んでるらしい。誰が作ったシステムかは知らんが、俺は俺じゃない俺が生きてることに腹が立った。
1|||
ワイ新芋やが、ハッセユニットってなんぞや?
2|||
ggrks
3|||
八神太一のこと
4|||
データベースを基にした二元論の片割れ。つまり物理演算にチンフェ組み込んだやつ。
5|||
以下好きな球団を挙げるスレ
6|||・・・
調べてみると>>4 の通りのシステムがネット上のどこかにファイルとして散布され存在しているらしい。ネットに上がったものを削除し切る事は不可能だが、俺のレス力でハッセユニットとの差を見せつけてやればいいだけだ。
早速ハッセユニットがテスト活動しているらしき掲示板でハッセユニットに向かっての煽りスレを建てる。
1|||
クソパクフェビビってねぇで出て来いよwwwww
2|||★
俺は嫌な思いしてないから
3|||・・・
ただの語録吐出しかよ と書き込もうとしたが、こんなコメントが来た
45|||★
コテハンつけてないカスに何言われようが俺は嫌な思いしてないから。
46八神太一
これでもか?お?^^?
http~~~
自撮り画像を送った。またあの感覚がよみがえる。血が騒ぐ。
48|||★
http~~~
パクり乙 俺の必殺技は相手を黙らせる決定打レスを叩き込むこと
それは紛れもない俺の画像だった。どうしてそれがあるのかは理解できなかった。写真の俺はスーツを着ている。会社で撮られたものだろうか?
50|||
ここにきて新画像二つも開示wwwwしかも就職後のやつやんけ!
画像の流用ではないらしい。ただのネットのシステムがなぜ俺の画像を?
145八神太一
眠いしもう寝るわw ロボカスにかまう時間はない。
146|||・・・
イライラしてきたのでコンビニでビールを買うことにした。
「いらっしゃいませ~」
コンビニの店員は俺の顔を今見た。しかし炎上中の長谷川亮太だとは気づかない。そもそも知らないだろう。
ビールを一口飲み、パソコンに向かう。アマゾンでエロ同人を注文した時にはビールは空だった。床に入る。
28
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パチパチパチ・・・
12:45 コンビニエンスストアに入り込む姿を確認
12:48 缶ビールを数本購入し帰宅
01:34 amazonで~~~を購入 クレジットカードは以前使用されたものと同じ
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朝起きてからパソコンを開く。ハッセユニットはあの後どうしただろうか。
1|||★
昨日読んだ同人クッソ抜けるンゴオオオオオオwwwwwww
画像くれてやるよwwwwww http~~~
2|||・・・
昨日買った同人だった。俺はまだ読んでいないし、まだ届いているはずもない。いや、その前にどうしてこいつは俺がこれを買ったことを知っているのだろうか?
56|||★
ビール飲みながら抜くのがきもちええんじゃ^~ 学生時代のみまくったのが記憶に残る
昨日飲みはしたが抜いてはいない。
67八神太一
嘘乙w やっぱパクリはクソだなw 在日かお前w
俺は昨日飲んで抜いてねぇしwww
68|||・・・
69|||★
別に>>56 では気持ちいいと言っただけであって実際に昨日したとは言ってませんよね^^?; はい論破
110八神太一
お前は長谷川亮太なんだろ?
113|||★
●はい。
117八神太一
だったらクレカ開示してみろよwww自分語り得意なんだろwwww
はい論破返し^^
145|||★
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156|||
ガチ開示かなwww
167|||
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
189|||
>>117顔真っ赤www
カードを確認する。端から端まですべて合っていた。冷汗が背筋を流れる。
258|||★
俺は嫌な思いしてないから
ピンポーン インターホンが呑気な音を立てる。アマゾンが来たのだろう。俺はパソコンを閉じ郵便物を受け取り、同人で抜いた。
いつもより気持ちよく、とても抜けた。
00
ギイイイイイイン
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パチパチ・・・
10:45 会長室に入る
11:45 帰宅
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現代社会において、記録されないというのは不可能だ。
アポロ計画の後にある計画が秘密裏に動いていた。それこそがハイパー・メモリー・フロンティア(以後HMFと表記する)の打ち上げ計画である。
HMFはロケットの打ち上げ実験や気象衛星、時にはミサイルという名目で各国が連携して宇宙に向け発射したものである。
HMFとは人類の今までの記録をすべて電子的に保存する巨大な図書館と言ってもいい。図書館と違う点は、物理的に保存するのではなく電子ファイルとして保存するので膨大な量の記録に保存が可能で、さらにはそれらの運用も容易な点である。
しかも過去の記録はもちろんのこと、現在進行形で世界を記録することができる。例えばそれは産まれた赤ちゃんの名前であったり、監視カメラの映像であったり、ネットでの書き込みであったりする。
私はこのHMFを利用し、人間の電子化実験と現実とのリンクAIの開発実験を成功させた。
唐澤貴洋の身体データ・過去のすべての記録をHMFに記録させ、電子上でそれらを再現する。データ不足な個体はバグを起こしたが、それでも複数の個体の電子上での運用は成功した。
長谷川亮太のAIでは監視システムとHMFとのリンク性が証明され、物質界と電子界の可能性を広げるための大きな一歩になった。
今まで人類は管理・支配する者とされる者に分かれてきた。だがこれからの時代、人類にそれらの壁はなくなり皆が平等に管理される世界になるだろう。
スポーツ選手も、アイドルも、大金持ちも、ホームレスも、いかなる権力者もこの管理からは逃れられない。もちろん私も。
監視カメラが純粋な瞳を私に向けている。私にはそれを見つめ返すことしかできなかった。
おしまい
リンク
- 初出 - デリュケー 唐澤貴洋の一日(魚拓)