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恒心文庫:先生「神田君」神田「はい」

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本文

先生「唐澤貴洋くん」
当職「はいナリ」

返事すると教室は波打つように笑いが起こった。その笑い声は酷く不快感を含んでいる。
当職が同級生の皆にからかわれ始めたのは四度目の脱糞事件からだ。
そう、先週の水泳の時間のことだった。
自由形で25m泳ぐ実習、当職は飛び込んだ瞬間に腹を打ち完全に理性を失った。
二秒という長い時間我慢し、犬かきで前に進むも限界は訪れてしまった。
絶叫と共に当職は噴射の限りを尽くし射精した。
結果としてプールは濁流の如く変容し、授業は中止となった。
この件は当職の出席番号が早い己を呪った。
最期に漏らせば何も問題なかったはずだ。
しかし心の狭い同級生たちは三度しか当職を許さなかったのだ。
これから当職に対する虐めの日々は幕を開けるのだった。
先に綴るが私は彼らを許さない。


当職は本格的に虐められ始めた。
付けられたあだ名の数は指が足らないぐらいだ。
スカラサワ、糞ヒロ、決壊ダムなど思い出すだけで身が震える。

一番堪えたのはあくる朝、教室に入り自分の席を見るとオマルが置かれていたことだった。
ニヤニヤしつつクラスメイト達は当職へ向かって
おいドデブ、今度から糞するときはそれを使えと言った。
我慢の限界だった。おとなしい当職だったが、怒るともう止まらない。
何故だ糞ぐらいどこでしたっていいじゃないか。
いつしたっていいじゃないか。
それにオマルが巨大な当職のお尻には小さ過ぎるのが一番ムカついたのだ。
普段当職に向けられる暴力は興奮できるし我慢できたが、
こんな陰湿なやり方だけは許せない。許さないナリよ。

修羅と化した当職は腕を回しおそらく主犯の山田に猪突猛進した。
しかし、山田まであと一歩のところでまたしても脱糞してしまい、足を滑らせてしまった。
この時に強く机に頭を打ち、気を失ってしまい病院に運ばれてしまった。
だが今となってはこれでよかったと思う。あの時止まれなかったら。
当職はきっと山田を殺してしまっていただろう。山田は命拾いしたのだ。
これで…これでいい。


当職が山田たちと喧嘩したのはPTAでも問題になった。

*冗Y丞ム矍卦*洋をいい加減退学させろ。うちの子も嫌がっている。頭が足らない。
糞を漏らすな。オムツをしろ。死ね。殺せ。殺す。

など心のない言葉が当職やパパ上ママ上を襲った。

もっと酷い暴言もあったが、誰も味方してくれない。当職達はボロボロになった。
多数決、この社会は悪い者たちが徒党を組むだけでまかり通る。
卒業までそんな理不尽さを味わった。

そんな時家族の絆も再認識できた。
この頃から当職の家族は近親相姦で愛を確かめあい
辛い日々を乗り切った。
死んでしまったかわいい弟。
厚史の中に毎日ぶちまけた思い出すといろんなところから涙が出る。

当職も随分と大人になり心に余裕ができた。
だからこそ、こう振り返ることができる。

当職を馬鹿にしてきたあの頃の人間達にかける言葉。
考えてみると何もない。

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