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恒心文庫:飽きっぽい息子

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本文

通販で頼んでいたドローンが届いたので早速分解し、そのプロペラを一つずつ父親の手足と胴体とにつけた。
父親はこれに抵抗をしたがその度に頭を殴打され昏倒し、なす術はなかった。
都合十回ほど殴られたものだから父親の頭にはこぶと裂傷が複数つき、垂れる血で目の前は見えなくなっていたが、それは問題ではなかった。
というのも、父親の体の制御権は彼自身ではなくもはやリモコンを握る息子のものとなっていたからである。
「テイクアウト」
白痴の息子は間違った英語を口にしながらリモコンを操作する。
父親の体が少し宙に浮くがすぐに落ちてしまう。なぜなら、彼は小太りで―これは息子もそうだったのだが―四つのプロペラではその体重を支えられないからであった。
何度繰り返しても父親が宙に完全には浮かび上がらないので、息子は怒り狂った。
父親を何度も足で蹴り、それに伴って彼の傷はますます増えていった。
完全に宙に浮かせるためには重さを減らす必要があると彼は気がついたので、そのために思いついたことを行った。
まず彼は父親の四肢を分解してみた。
手足と腕はプロペラをつければ飛んだのだが、胴体はやはり飛ばなかった。
首を切り落としてみたが、やはり飛ばない。頭にプロペラをつければ頭は飛ぶが胴体を飛ばすことはできなかった。
まだ重さを減らす必要があるので、次に内蔵を取り出した。
飛ぶことができるほどには十分に軽くなった。
これで父親の体を宙に浮かせることに成功したのだが、数十分ほど街中を飛ばすうちにすっかり飽きてしまった。
リモコンを放り出すとつまらないなあとボソっとつぶやきアイスを食べて歯も磨かず布団に入りやがて人類は滅び地球は太陽に飲み込まれて溶けて消えその内宇宙も消滅した。

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