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恒心文庫:ポッキーの日

提供:唐澤貴洋Wiki
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本文

港区某所に立つ某ビル。
東側外壁は美しく飾り立てられ、近未来を感じさせる意匠となっている。

その一室に、最近引っ越してきたものたちがいる。

部屋の奥に飾られた「恒心」の掛け軸と「鞠遊」の日本画。
部屋の壁紙には茶色い何かが塗りたくられ、すえた異臭が漂っている。
昼間であろうとカーテンが開くことはなく、夜になるとこの世のものとは思えぬ呻き声が聞こえるという。

ここは法律事務所Steadiness(ステディネス)。
あまねく人類を救済する聖地であり、すべての罪を背負って燃えあがる浄化の炎のための薪。
あるいは、おぞましい獣が跳梁跋扈するこの世の地獄である。



その日は11月11日。
ポッキーの日。

当職は事務所の机の上で足を広げ、自慰をした。
こういうときのために、事務所の壁には大きな鏡がたくさん掛けてあるのだ。

亀頭と乳首を同時に刺激しながら射精した当職は、ひとつため息を付いた。
(乳首のいじり方を教えてくれたのはひろあきだったナリね……。)

手についた精液を舐めてきれいにした後、机の上に置いておいたプリッツを開封する。トマト味だ。
(しょーへーは、トマトと赤ワインが好きだったナリね。当職はちゃんと知っているナリ。)

プリッツを1本手にとって、自身の肛門に突き入れる。
引き抜けばプリッツの周りに便がねっとりとまぶされ、あたかもポッキーのように……ならなかった。


――ポッキーゲームは繊細なバランスの上に成り立っている。
食生活を厳しく律し、最高の色・粘度・未消化物の便を作り上げなければ、このゲームは成立しない。
年中暴飲暴食を続け、コーンとニラ混じりの下痢を繰り返す肥満中年には望むべくもなかった。


訳もわからず肛門に抜き差しするうち、力加減を間違えたかプリッツは折れてしまった。
破断したプリッツが当職の直腸を刺激した。たまらず絶叫し、噴射する。当職を映す大きな鏡に下痢便の花が咲いた。

(当職はこんなこともできないナリ……? ふたりが教えてくれたポッキーゲームもできない……。
ひっこしのお手伝いもできなかった。べんごしのしごともあんまりうまくいってない……。当職はふたりがいなければ何も……?)
自分の事務所を見渡す。ここにいる弁護士は自分だけだ。誰もいない。みんな……出ていってしまった…………。

当職は、自分の陰茎を握りながらぼんやりしていたらしい。気がつくと目の前にはひろしがいた。
ひろしは鏡に付いた当職の便を一心不乱に舐め取っていた。ペチャペチャ。ズルズル。サクサク。
鏡に映ったひろしと目が合った。その目は当職をはげましているような気がした。
(そうナリ。……そう、ひろゆきとのディベートは完全に論破してやったナリ! 今度出版する本でさらにギタギタにしてやるナリ!!)
(そして有名になって、印税たくさん稼いで、バー笹木のママとおセックスナリ!!! テレビで共演したなゆかちゃんともおセックスしたいナリ!!!!)

当職の体の中に闘志が湧いてくるのを感じる。
当職は、当職の意志のように熱く硬く大きくたくましい当職の陰茎を、当職のバラ色の未来に向けて再び、当職の手でしごき始めた。



「炎上弁護士」
日本実業出版社
唐澤貴洋 著
2018年12月13日発売予定

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