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恒心文庫:ペニス

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本文

変わっているけどペニスが好きな少年だった。弟のペニス、父のペニス、同僚のペニスををしゃぶったことは血となり肉となっている。

弟は兄である当職を跪かせながら口淫させるのが好きだった。
弟は何をやっても当職よりも優れていた。交友関係も広く、もちろんペニスも大きかった。当職とは何からナニまで違っていた。同じ屋根の下で暮らしながらも、同じ二人の間にははっきりとした「差」があった。
弟のペニスを一心不乱にしゃぶる当職の頭を、弟はいつも見下ろすように眺めていた。二つのDNAの間に生じた「差」を確認するように。
神様はなぜ人間をペニスをしゃぶらせる側とペニスをしゃぶらせる側の二つに分けたのか。それは弟の優秀な頭脳をもってしても分からないようだった。当然、無能な当職にも分からない。
ただ当職は知っている。精液が喉の奥で爆発するように飛び散る感触を。身体の中身まで蹂躙されるような快感を。
弟はこれを知ることなくこの世を去ってしまった。当職は弟に対してもう劣等感を抱いていない。

父も当職の舌と喉を愛した。
父のペニスは弟のものより萎んでいて、鼻をつくような異臭を放っていた。しかし、母なる海のように安らぎを感じる、優しいペニスだった。
柔らかい父の分身を咥えながら、当職は悶える父の顔を見るのが好きだった。射精を終えると罪悪感からか優しくなる父も好きだった。父は行為を終えると、いつもSOWAのアイスを奢ってくれる。「これで口直しをしろ」という気遣いなのだろう。でも父は知らない。脳を溶かすようなペニスの味を。

しかし最近は父のペニスもご無沙汰で、当職は同僚のYのペニスばかりをしゃぶっている。
Yのペニスときたらフランクフルトのようで、肉汁のようなカウパーが垂れる度に当職の「食欲」は際限なく刺激される。
優れたペニスは優れた肉だ。何度かYのそれを虎のように噛みちぎって咀嚼してしまいたくなったこともあった。しかし当職はギリギリのラインで自分を保っている。当職はあくまでも、人を傷つけるのではなく人の肉棒を咥え続ける人間でありたいのだ。

弟のそれより遥かに大きなペニスに喉を突かれるたびに、当職の喉は歓喜のあまりえづいた。Yもそんな当職を見るのが嬉しそうだった。喜んでもらえるなら、しゃぶり甲斐もある。

ただ当職はたまに考える。
弟も実はペニスをしゃぶっていたのではないだろうか。
悪いものたちに無理矢理しゃぶらされ、軽蔑していた兄と同類に成り下がったことに絶望し自ら命を断ったのではないか。
これは、なんの根拠もないただの推論だ。しかし当職は無能だから、それがありえないということを証明できない。

再び湧き上がる弟への劣等感。忘れるようにペニスを当職はしゃぶる。ペニスを咥えている間は、当職は嫌なことを忘れられる。記憶をリセットするように、Yのスペルマが当職の口の中に飛び散る。子種と快感だけしか残らない

当職にはペニスがある。
当職にはペニスがあるのだ。

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