利用者:核
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~とは、小関直哉が2014年2月17日から同年3月23日にかけて執筆した小説シリーズの総称である。またこれらの作品群から本文の現存していない「ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ VS提督LOVE勢の巻 前編」を除いたものは「初霜四部作」と呼ばれることがある。
概要
この小説は艦隊これくしょん -艦これ-が2014年2月14日のメンテナンスにおいて実装を行った「ケッコンカッコカリ」と呼ばれるシステムと同ゲームのキャラクター、初霜のセリフを基に執筆されたものである。これらの作品はなんJにおいて定期スレとして愛された。
作品名 | 投稿日時 | コメント |
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ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ | ||
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ その後 | 2014年2月17日 | |
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ 姉妹への報告の巻 | 2014年3月6日 | |
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ VS提督LOVE勢の巻 前編 | 2014年3月19日 | 「何が始まるんです?」「大惨事正妻大戦だ。」修羅場(?)編です。後編は書け次第。追記 閲覧数1000... |
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ VS提督LOVE勢の巻 後編 | 2014年3月23日 | 続き。何故か異常に長くなってしまった。一応本シリーズはこれで一段落のつもりです。作者のミリタリーに関... |
作品
当項では各作品の詳細について説明する。
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~
あらすじ
主人公の初霜は演習中に不調なところを見せ、友人の霞に怪訝に思われる。何かあったのではないかと尋ねる彼女に対し、初霜は自分が提督に告白されたことを明かした。突然の告白にパニックとなった彼女は言葉を濁し、その場から逃げてしまったのである。霞は初霜の行動に半ば呆れつつも、彼女を激励する。彼女は霞に見送られ、提督のいる執務室に進撃するのであった。
全文
全文
フー、っと息を吐き出しながら私は敵フラグシップ級のル級に狙いを定める。夜の闇のせいでル級はこちらの位置をまだ把握していない。
腰の魚雷発射管に装填されているのは必殺の61cm酸素魚雷である。直撃すれば一撃で戦艦でも空母でも葬り去れるそれはかつての戦争で連合軍からロングランスと恐れられた。駆逐艦から大型艦艇へ唯一致命傷を与えられる「槍」を私は放つ。
バーンという威勢のよい音と共に発射された計6発の酸素魚雷はル級に向かって海中を走っていく。私は心の中で命中までの時間をカウントする。
(…5、4、3、2、1…外れた!?)
炸裂音もしないし水柱も上がらない。ル級はこちらに気づいたようだ。ル級の16inch3連装砲の砲口と目が合った。背筋が凍る。
次の瞬間16inch砲が火を吹いたのが見えた。回避しなければ。と、頭では思うが体が反応しない。
次の瞬間、赤いペイント弾が私の腹に命中する。実戦だったら良くて大破。最悪轟沈していただろう。
見届け人兼教官役として付いて来ていた神通がル級を模した標的を回収している。この標的は自律して動き敵として認識した物にペイント弾を発射する仕掛けが付いている。他にも幾つかタイプがあり深海棲艦との戦いを意識した訓練の時には有用だった。
「珍しいわね、アンタがやられるなんて。」
脇から訓練の様子を見ていた霞が声をかけてきた。胸元に着けてある「18」と書かれた部隊章が目を引く。それはピカピカに磨き上げられており彼女が自分の所属している部隊に誇りを持っているという事が伺えた。
「あぁ、ちょっと今日は調子が悪くて…」
「…アンタ、何かあったんじゃないの?」
「別に何も無いわよ。」
「嘘おっしゃい。アンタと私の仲じゃない、それくらい分かるわよ。」
前世で同じ隊に所属した事もあり、坊の岬沖海戦でも共に戦った彼女とは現在でも友人同士である。
「訓練終わったら少し付き合うわよ。相談に乗るくらいならしてあげるから。」
彼女の性格は若干トゲトゲしい所があるものの、信用足りうると認めた相手にはとことん親身になってくれる。私はそんな彼女の性格は嫌いじゃない。
「えぇっ!アイツの方から告白して来た?!」
「ええ。」
訓練を終え帰還後ラウンジにて話を聞いてくれた霞はとても驚いた様子だった。当然である、私は以前提督に対する恋愛感情を彼女に相談した事があったからだ。それが提督の方からアクションをして来たのだ。やはり私は幸運なのだろう。
「で?なんて返事したの?」
「ええっとね…それがちょっと面倒な事になっちゃって…」
回想
昨晩
私が秘書艦の仕事を終え、部屋に帰ろうとした時提督は声をかけて来た。
「初霜、ちょっと時間良いか?」
「はい、大丈夫です。」
「…あぁ、ソファにでも腰掛けていてくれ。」
とりあえず言われた通りに私はソファに腰掛ける。
「…重要な話だ。多分、俺にとっても君にとっても。」
「…?新たな作戦か何か開始されるんですか?」
「…作戦と言うか、何と言うか…」
提督は初霜と向かい合う形で座った。
「俺にとっては…真珠湾、ミッドウェー並みの…いや、それは言いすぎか。そうだ、キスカだキスカ撤退戦。それくらい真剣な話だ。」
「キスカ…」
あの作戦には私も参加していた。その時の記憶が蘇る。あれほど上手く事が運んだ作戦は後にも先にも無いだろう。艦娘に転生した後も私はキスカ島(暗号名ではキス島)で包囲されていた陸軍の包囲を解いた事があったが、その時は途中で深海棲艦の戦艦と遭遇して酷い目にあった。それを考えると木村提督がどれだけの運と指揮能力を持っていたかが良く分かる。霞がイマイチ提督を信用していないのはきっと彼女がそんな木村提督のミンドロ島沖海戦での座乗艦になった事があるからだろう。提督と木村提督を比べたくなる気持ちも分かるが流石に相手が悪い気がする。
一方でしばらくブツブツ何か呟いていた提督だが、私が心ここにあらずといった状態だったので少し心配になったようだ。声をかけて来た。
「…初霜…?良いか?」
「っ!ごめんなさい!」
「もう一度言う。とても重要な話だ、しっかり聞いてくれ。」
「は、はい。」
すー、と息を吸い込んだ提督は覚悟を決めた様で一気に話した。
「初霜…好きだ。」
「…って、ええっ!?」
「…すぐに答えを出してくれなくても良い。ただ俺の気持ちは覚えておいてくれ。」
パニックだった。北号作戦でも坊の岬沖海戦でも生還した私だが、今回ばかりは焦った。憧れの人も私の事を好いてくれていた…なんて幸運なんだろうか私は…今の私は雪風ちゃんすら凌駕する存在だ!!
だが、嬉しいと同時に私にはまだ心の中で少し迷いが有った。結果、
「…今の私は恋愛には興味がないの。それでも、待っててくれるの…?」
「…あぁ、いつまでも待ってやるさ。」
結局昨晩はそんな聞き方によっては死亡フラグに聞こえかねない台詞を残して撤退して来た。これでは戦争が終わる直前に「私実は鎮守府に恋人が居るんですよ、戻ったらプロポーズしようと…実はもう花束も買ってあったりして。」とか僚艦に呟いて直後にレーザーか機雷に吹き飛ばされてしまうかもしれない。どこかのポロが趣味のF-16乗りみたいに。
回想終了
「で、逃げてきたと…」
「…まぁ、そうなるわね…」
「なにやってんのよ…このグズ。応援してる私が馬鹿みたいじゃない…」
「返す言葉も見つからないわ…」
案の定霞はため息をついて「きみはじつにばかだなぁ…」とでも言いたげな表情で私を見てくる。視線が痛い。
「…なに?アンタ本当にアイツとくっつく気あるの?脅すわけじゃないけど、アイツ狙いの艦娘なんていっぱい居るわよ。」
ざっと思い浮かべるだけでも提督に好意以上の感情を持っている艦娘は多い。いつも積極的にアプローチを掛けている金剛を初め、雷、大鳳、瑞鳳、如月、榛名…ライバルは多い。うかうかしてると提督を取られてしまう可能性もある。戦場で狙っていた標的を横取りされるのとは訳が違うのだ。
「私の思いは本気よ!!」
「だったら…」
「私の思いは本気…でも、ちょっと迷いもあるのよ…」
「迷い?」
一呼吸置いて私は語った。
「今は戦時よね…そんな中で私は提督と結ばれていいのかしら…って思って。」
私達は艦娘。守るべきものの為この身が文字通り水漬く屍となるまで戦わなければならない。そんな中で私は途中で幸せになっても良いものなのだろうか…
「何だ、そんな事?」
「何だ、って!私は本気で悩んで苦しんでるのよ!」
「…いい?初霜。この際だから言わせて貰うけどね、アンタは一人で色々抱え込み過ぎなのよ。」
「…」
霞は私が聴いてくれている事を確かめ、言葉を続ける。
「アンタは一人でも多くの人を守る為に戦ってる。それは私も立派だと思うし素直に尊敬するわ。でも、私に言わせれば全てを守り抜くなんてどだい無理なのよ。」
「そんな事!」
「…言い方が悪かったわ。所詮私達は言わば消耗品の艦娘、それも駆逐艦。一隻で出来る事なんて限られてるわ。現に今日も戦場では誰かが死んでるし、そしてその人達を全員助けるなんてのも無理。」
そのまま霞は言葉を紡ぐ。
「…だから私は私自身の為に戦ってる…私自身と18駆の皆と鎮守府にいるたかだか数十人の為に戦ってる…」
「…」
「…アンタの信念を曲げろとは言わないわ。でも、もう少し肩の力抜いてもいいんじゃない?アンタのお姉さんの初春もいつも言ってるでしょ、戦争は一人でするもんじゃないって。」
「霞ちゃん…」
「…悪いけど、お国の為にどうとか、滅私奉公とかいう言葉、私は大嫌いなのよ。昔、阿呆な上層部が言い出したこの美辞麗句のせいで一体何人の貴重な人材が失われたことか…」
この辺はいかにも上層部嫌いで現場派な霞らしい。「後方の安全な防空壕に引きこもって現場に責任を負わせる事しか知らないお偉いさんに戦場の何が分かる。」というのが彼女の持論である。
「好きなら好きで良いじゃない、そんな面倒くさい事考えてないで。自分の気持ちに素直になりなさいな…私はアイツの事は上官として信用はしてないけど、一人の男としては友達を任せるくらいに信頼はしてるから。」
提督にはきつく当たる事も多い霞だが、決して提督の事が嫌いな訳ではない。それなりの理由がある。
なんでも前世で上層部からの理不尽な叱責のせいで彼女達18駆の司令が割腹自殺してしまったらしいのだ。その人はかつて私の艦長をしていた時もあったのでその人の事は私も良く知っている。非業の死を遂げたと聞いた時はショックだった。
その事が彼女の心に暗い影を落としている原因なのは間違い無いだろう。ちょうど私の名誉が戦後に貶められたのと同じように。
そんな事があったから彼女は提督にはそんな事になってほしくない。そんな感情があるからつい厳しい言葉を提督に掛けてしまうのだろう。
現に以前提督が部隊の損害から海域を途中撤退した時、上の連中が提督の陰口を言っていると聞いた彼女が自分の事の様に怒っていた事を私は覚えている。
「…信用と信頼…か…」
「…ガラにも無い事言ったわ…不愉快だったら忘れて。」
「いえ、少し気持ちが楽になったわ。」
「そう…良かった。」
満足げに霞は呟いた。
「だったら今からでもアイツの所に行ってアンタの思いを伝えてきなさいよ。」
「えっ?今から!?」
「兵は拙速を尊ぶってかの孫子も言ってるわ。グズグズしてアイツを誰かに寝取られたらそれでお終いよ。」
「わ、分かったわ…行ってくる。」
「また途中撤退なんてしてきたりしたら私がアンタの事を雷撃処分するから覚悟しときなさいよ。」
恐ろしい事を言っているが顔は笑っている。不器用な彼女なりの私へのエールなのだろう。
「なんならそのままアイツと夜戦に突入してきても良いわよ。アンタの同室の雪風には私から言っておくから。」
「茶化さないでよ…」
と、霞に見送られて私は提督のいる執務室に進撃した。
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ その後
あらすじ
初霜は告白を承諾した。提督の自室にて二人は枕を共にするのであった。事後、提督はベッドをを離れ机の中から一つの小さな箱を取り出した。中に入っていたのは指輪である。提督の話によればこの指輪は軍による戦力の強化計画の中で作られた、艦娘の能力のリミッターを、無理のない範囲で解除する為のものであるという。提督が艦娘にこれを渡す様は結婚に例えられ「ケッコンカッコカリ」などと呼ばれているそうだ。
提督はこの機会にと彼女に告白をしたのであった。
概要
これは2014年2月17日に執筆された、小関直哉の艦これSS全52巻の中でもっとも有名な作品のひとつである。 艦これのキャラクター「初霜」と提督のプレイを描写しており、生々しい表現や女性視点で書かれている点等が注目され、コピペとして出回り改変も作られた。 掲示板のコピペとしてちょうど良い長さにするため、特にインパクトの強い性行為シーンの一節が切り取られることが多い。
初めは痛いだけだったがやがて慣れてきたのかその痛みも多少和らいできた。 その代わりに提督のモノが私の中を動くたびに膣内で痛みより快楽が占める比率が大きくなってくる。 「うぅっ…あぁ…提督…気持ちいいです。」 「俺もだ…」 「良かった…提督も私で気持ちよくなってるんですね…っうん!」 「…正直言うと、もうこっちも余裕が無くなってきた。」 ピストン運動を続けながら提督が呟く。正直こちらも限界が近づいている。 「私も…イキそう…提督、今日私安全日なんです。だから…中にっ!」 「初霜っ…もう限界だ…」 「はい。提督、いつでも…どうぞ。」 「うっ…くうっ…」 提督はそのまま私の中に精液を発射した。熱いドロリとした精液が私の子宮に注がれていくのが分かる。
改変コピペ
初めは痛いだけだったがやがて慣れてきたのかその痛みも多少和らいできた。 その代わりに尊師のモノが私の中を動くたびに膣内で痛みより快楽が占める比率が大きくなってくる。 「うぅっ…あぁ…尊師…気持ちいいです。」 「当職もナリ…」 「良かった…尊師も私で気持ちよくなってるんですね…っうん!」 「…正直言うと、もうこっちも余裕が無くなってきたナリ。」 ピストン運動を続けながら尊師が呟く。正直こちらも限界が近づいている。 「私も…イキそう…尊師、今日私安全日なんです。だから…中にっ!」 「初霜っ…もう限界ナリ…」 「はい。尊師、いつでも…どうぞ。」 「うっ…くうっ…」 尊師はそのまま私の中に精液を発射した。熱いドロリとした精液が私の子宮に注がれていくのが分かる。
初めは痛いだけだったがやがて慣れてきたのかその痛みも多少和らいできた。 その代わりに尊師のモノがオメガの中を動くたびに肛門内で痛みより快楽が占める比率が大きくなってくる。 「うぅっ…あぁ…尊師…気持ちいいです。」 「当職もナリ…」 「良かった…尊師もオメガで気持ちよくなってるんですね…っうん!」 「…正直言うと、もうこっちも余裕が無くなってきたナリ。」 ピストン運動を続けながら尊師が呟く。正直こちらも限界が近づいている。 「オメガも…イキそう…尊師、今日オメガ安全日なんです。だから…中にっ!」 「当職っ…もう限界ナリ…」 「はい。尊師、いつでも…どうぞ。」 「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!! (ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」 尊師は突然オメガの口の中に大便を発射した。熱いドロリとした大便がオメガの食道に注がれていくのが分かる。
コミカライズ
汚物聖人氏による漫画化[1]
全文
全文
「提督、いらっしゃいますか?」
「居るぞ、入れ。」
「失礼します。」
そう言って私は執務室に入る。今日の秘書艦は長門さんのはずだがすでに仕事を終えて部屋に帰ったのか姿は無かった。提督一人なら好都合である。
「…何か用かな?」
いつもと変わらない表情で提督は問いかけて来た。
ずるいと思う。昨晩あんな告白をしておいて至って平静なのだ。これではこれから思いを伝える私の方が緊張してしまう。
「…提督、昨日の話なんですが…」
「…」
「私は…」
「ストップ、少し心の準備をさせてくれ。」
前言撤回。ポーカーフェイスを装ってはいるが提督は提督で緊張しているらしい。現によく見ると緊張からか手が震えている。
「…よろしいですか?」
「…あぁ、こちらは大丈夫だ。」
少し深呼吸をして気持ちを落ち着けていた提督は覚悟を決めた様子で私の事を見てくる。言え、この人への思いをぶつけるんだ。と自身を鼓舞する。
「…提督、あれから少し自分でも考えました。私は本当にあなたの事が好きなのか、
今返事をして良いものなのか…そして、霞ちゃんに言われた言葉で決心がつきました…」
「私もあなたの事が好きです。」
「…そうか、ありがとう…」
「…なかなか恥ずかしいものですね。思いを伝えるというのも…」
思わず提督から顔を背けてしまう。これで提督と晴れて恋人同士である。
他の提督LOVE勢の事を考えるとまだ問題が無いわけでは無いが、まぁ後の事は後で考える事にして今は彼と恋人同士になれた事を喜ぶとしよう。
「昨日は俺の方がそれをやったんだ。初霜がやらないというのも少々ずるいと思わないか?」
少々意地の悪い顔をして提督が言う。
「…意地悪…」
「俺が悪かったよ、そう拗ねるな…」
「…提督…恋人同士といったらアレですよね。」
多少は反撃しても構わないだろう。私は唇を提督に向ける。
「…」
「…悪いと思ってるならそれなりの謝意を見せてくださいよ。」
「…分かった。」
私は軽く口付けしてくるくらいに思っていたが、提督は私の事を抱き寄せやや強引に唇を合わせてきた。
だが、こういうのも悪くないと思う。
「…ぷはっ」
30秒かそこいらだろうか、長い口付けを終え唇同士が離れる。キスの間に混ざり合った唾液がこぼれ落ちる
「…初霜、君が良ければで良いんだがこの続きもどうだ…?」
「続き?」
「まぁ、平たく言えば君をこのまま抱きたい。無論、夜戦的な意味で…」
「っ!?…分かりました、提督に任せます。」
「…無理しなくても良いんだぞ。」
「私もここまでしといて今更後には引けませんよ…よろしくお願いします。」
同室の雪風には…霞が何とか上手く伝えてくれる事を祈ろう。
「流石に執務室でするわけにもいかん。俺の自室に移動しよう。」
「はい。」
そう言うと私は提督の腕に抱きつく。
青葉にでも見られたら面倒だが、いずれにせよ私と提督がこんな関係なのは遅かれ早かれバレてしまうだろう。
現在私が提督に恋心を抱いてる事を明確に知っているのは21駆メンバーと霞、雪風くらいだ。
彼女達には何度かこの件を相談した事がある。彼女達は信頼できるから良いとしよう。
そして問題はその他の艦娘である。この前のバレンタインの件で私も提督狙いである事が少々鎮守府に広まってしまっている。
もちろん口伝えの噂なのでどこまで広がっているかは分からない。
だが秘書艦を務める事が多いとはいえ提督と一緒に居る時間が増えれば怪しく思う艦娘も多くなるだろうし、
何かの拍子にイチャイチャしてる所を目撃される可能性もある。そして人の口には戸は立てられない。なので私は開き直る事にした。
「初霜…」
「これくらい良いでしょ。」
「誰かに見られたら…」
「その時はその時。誰かに会ったら私が堂々と宣言しますよ。『私はさっき提督と恋人同士になりました。』って。」
やれやれ、といった表情で提督は私と共に自室へと向かう。
―これよりR-18パート。苦手な人は撤退推奨―
特に誰かに目撃されるという事も無く私達は無事提督の自室に着いた。
「汚い部屋だが勘弁してくれ。とりあえずベッドにでも腰掛けてて。」
汚い部屋と形容したがそこまでの汚部屋という訳でもなくそれなりに整理はされている。提督は奥で軍服を脱いでいる。
これからする事を考えると少し不安だが後はなるに任せるしかあるまい。
「…初霜。もうそちらは大丈夫かな?」
「準備」を終え私の隣に座った提督はそう尋ねてくる。
「…はい、準備万端ですよ。」
その言葉を合図に提督は私を自室のベッドに押し倒した。
鍵はかけてあるし、提督の自室なら執務室の様に急に誰かが入って来るという事も無いだろう。
怖い
だが、同時に提督と一つになりたいという願望が心に浮かぶ。
結局私はその願望に忠実になる事にした。
提督の唇と私の唇が重なり合う。彼はフレンチキスで済ますつもりだったのだろうがそうはさせない。
私は腕を回して提督の体を半ば強引に抱き寄せる。彼は一見優男な印象をうけるが腐っても軍人である。
体はがっしりとしている。私の様な小娘一人抱きついたくらいでバランスを崩す事は無かったが、彼は私の行動に驚いたのだろう。
一瞬ひるんだ彼の口内に私はやや強引に舌をねじ込み蹂躙を開始する。
ここまで戦況は提督の有利だったがここらで多少反撃してもいいだろう。
一瞬ひるんだ提督もすぐに我に帰り迎撃を開始する。
舌を激しく絡ませながら提督は器用に私の服のボタンを外し、ブラをずらして小ぶりな乳房をあらわにする。
そのまま提督は唇を離し左指で左の乳首を、舌先で右の乳首の愛撫を始めた。
先程まで海上で訓練していたし、あまり良い香りはしていないだろうな…と思うがそれは仕方が無い。
それに火薬の匂いなどは既に体に染み付いていて今更洗って落ちる物でもない。
少なくとも重油と火薬と潮の混ざり合った香りが世間一般で言う少女の香りと間逆の物である事は確かだろう。
でも存外提督は特に嫌な顔はしていないのでこれはこれで興奮してくれているのかもしれない。
そんなくだらない事を考えているうちにも提督の愛撫は激しくなってくる。
「んっ、うん、あっ…」
自分でするのとは全く違う感覚に私の嬌声は自然大きくなる。
提督は攻め手を休めず残った右手の指を私の秘部に進出させる。ショーツの中に手を入れ触られてビクンと体が跳ねた。
他人に触られるのは当然初めての事であるので反応も大きくなる。
「初霜、弄るぞ。」
「はい…提督…初めてなので優しく…」
「了解。」
提督はそう言われた通りゆっくりと私の秘部を触る。割れ目に沿って指を転がし、弄り、確実に私に快楽を与えてくる。
秘部からは早くも愛液が染み出し卑猥にクチュクチュと音を立てていた。
「うっ、ああっ、提督…」
「濡れてきてるな。中に挿れても大丈夫かな…?」
そう言って提督は中指を立てて秘部への挿入を始める。
「待って、心の準備が…」
私も年頃の少女なので何度か自分でした事はあるが、怖くて膣内にまで指を挿れた事は無かった。
「…肩の力を抜いて、怖かったら目をつぶっておくと良い。」
「はっ、はい…っ、あぁっ、うぅん…」
提督の指が私の膣内に侵入して来た。初めての異物感に戸惑うが、やがてそれは快楽と興奮へと変化していく。
「ああっ…はぁ…提督、気持ち良いです。」
「それは良かった。痛かったらどうしようかと思ったよ。」
しばらく提督の愛撫を受けて快楽と興奮を高ぶらせていた私だが、そろそろ体が火照ってきてしまった。
それに提督の単装砲も興奮して巨大化しており発砲許可を今か今かと待っている様にも見える。
「…提督そろそろお願いします。」
「ああ。その前に初霜も服脱ごうか。多分汚れるだろうし。」
提督に言われて私も服を脱ぐ。
「あ、あの、あんまりジロジロ見られると恥ずかしいです。」
「ああ、すまん。初霜が綺麗でつい、な。」
そう言って提督は目を逸らす。今更裸を見られて恥ずかしいも何も無いが服を脱いでる所をねっとり視姦されるのはあまり気分の良い物ではない。
服を脱ぎ終え戦闘を再開する。戦況はこちらの不利だが、まぁこちらは「初陣」だし仕方が無い。
「初霜…もう我慢出来そうに無い。中に入れるぞ。」
「はい。」
そう言って提督は私を押し倒した格好のままで秘部に巨大化した「単装砲」を押し当ててきた。
お互いから分泌された粘液同士が絡み合ってヌチャヌチャと音を立てる。これが私の中に入る事を考えるとなんとも複雑な気分になった。
しばらく粘液同士を絡ませていた提督だったが意を決したのか、ついに肉棒を膣内に挿入してきた。
そして提督は挿入させた勢いのまま私の処女膜を貫く。
「ぐっ…くぅっ…痛っ…」
「…すまん、もっと優しくするべきだった。」
「…大丈夫、こんなの戦場での負傷に比べたら…っうん…」
私の秘部からは先程から赤い血が愛液と交じり合って垂れている。初めての時は気持ちよくなれないとは聞いて覚悟はしていたが、
なかなかきつい物がある。だからといって提督に余計な気遣いをして欲しくは無い。
「あっ…くっ…提督…私は大丈夫だから…提督の好きに動いて。」
「だが…」
「いいから…すぐに慣れると思います…だから…」
「…初霜。」
そう言うと提督は私を強く抱きしめてキスをしてくれた。
「無理をするなって言ったろう?」
「…提督、心配しないでください。私はこうして提督と一緒になれて嬉しいんです。
だからこれくらい大丈夫です。続けてください…お願いします…」
「…分かった。俺も出来るだけ痛くないようにする。」
「お願いします。」
そう言って提督は行為を再開した。肉体同士がぶつかる音が室内に響く。
初めは痛いだけだったがやがて慣れてきたのかその痛みも多少和らいできた。
その代わりに提督のモノが私の中を動くたびに膣内で痛みより快楽が占める比率が大きくなってくる。
「うぅっ…あぁ…提督…気持ちいいです。」
「俺もだ…」
「良かった…提督も私で気持ちよくなってるんですね…っうん!」
「…正直言うと、もうこっちも余裕が無くなってきた。」
ピストン運動を続けながら提督が呟く。正直こちらも限界が近づいている。
「私も…イキそう…提督、今日私安全日なんです。だから…中にっ!」
「初霜っ…もう限界だ…」
「はい。提督、いつでも…どうぞ。」
「うっ…くうっ…」
提督はそのまま私の中に精液を発射した。熱いドロリとした精液が私の子宮に注がれていくのが分かる。
「イクっ…イっちゃう…」
殆ど同じタイミングで私も達してしまった。はぁはぁという二人の荒い呼吸が室内に響いた。
「…もし直撃したら責任は取らせてもらう。」
抱き合いながら提督が呟く。
「…はい…その心構え、立派だと思います。」
「男としてそれくらいは…な。」
上官が部下を孕ませたとあれば色々と問題になるだろうがその時はその時と開き直る事にした。
「初霜に渡したい物がある。」
事後、しばらくベッドの中で私は提督と抱き合っていたが、
提督はそう言ってベットを離れ机の中から一つの小さな箱を取り出し私に手渡してきた。
「なんですかこれ?」
「開けてくれれば分かる。」
恐る恐る箱を開けると中には指輪が入っていた。埋め込んである宝石はトパーズだろうか?
「ええっと、これは…いくら何でも気が早すぎませんか…?」
「…そう言われても仕方が無いだろうな。だがそれは結婚指輪じゃないんだ。」
「と、言いますと?」
提督が語ってくれた話をまとめるとこういう事だった。
何でも少し前に軍で、ある程度錬度が高い艦娘を対象にした強化計画が発動されたらしい。
艦娘の能力にはある程度リミッターが掛けられているがそれを一定値解除してより艦娘を強化する事がその計画だ。
だが安全の為に掛けられたリミッターを外したのでは艦娘にも負担が掛かるし、なにより本末転倒である。
そこで艦娘に無理の無い範囲で安全にリミッターを解除するのがこの指輪の効果らしい。
提督が艦娘に指輪を渡す様を結婚に例えて「ケッコンカッコカリ」などと呼ばれているそうだ。
「そういう事だからこの機会にと俺は君への告白に至ったわけだ。」
「何故今に告白なのかと思ったらそういう事があったんですか…」
「君への思いは本気だぞ。」
「それくらい提督を見てれば分かりますよ。馬鹿にしないで下さい、私はこう見えても提督より年上なんですよ。」
私の生まれは1933年。今年で81歳である。艦娘の歳の数え方がそれで良いのかどうかは知らないが。
「それはそうと是非とも指輪を受け取ってくれないか?」
「もちろんです、ありがとうございます。ところでこの宝石も元々ついていたものですか?」
受け取った指輪を色々な角度から見ながら私は尋ねる。
「いや、それは俺の注文だ。金に関しては心配するな。それくらいの蓄えはあるし軍隊生活じゃ特に使う機会も無いしな。」
「でも加工しても指輪の効果って大丈夫なんですか?」
「その指輪を作った技術部の連中に頼んでしてもらった物だから安心してくれ…
艦娘の誕生日って起工日と進水日と就役日のどれにあたるか分からなかったから
初霜の進水日の11月の誕生石であるトパーズを選ばせてもらった。問題無かったかな?」
私の進水日は11月4日である。正直人間で言う誕生日がその三つの日のどれにあたるかは私も分からない。
「…それに関しては問題ありません。それにしてもトパーズですか…」
トパーズの石言葉は誠実、友情、そして「潔白」。汚された私の名誉の事を思うと偶然と言えばそれまでだろうが悪くない意味を持つ石だ。
「トパーズは嫌いだったか?」
「…いえ、大好きです。」
「それは良かった。早速つけてみてくれないか?」
言われた通り指輪を左手の薬指につける。大きさはぴったりである。そして同時に力が湧いてくるような気がした。
「どうですか?」
「うん、似合ってる。初霜は可愛いな。」
面と向かってそんな事を言われると照れてしまう。
私はお返しとばかりに提督に口付けした。
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ 姉妹への報告の巻
あらすじ
初霜は提督と共に、『ケッコンカッコカリ』をしたことを姉妹艦である初春・子日・若葉に伝える。 初春と子日がこれに諾う意思を見せるなか若葉だけはこれに猛反対をする。彼女はこれ以上の議論は不毛であると部屋を出て行ってしまった。また初霜と提督との関係が明るみに出るのにさほど時間はかからず鎮守府内は一時お祭り騒ぎになったという。 初春らとの挨拶が済んだ後、彼女は若葉の元へ向かう。初霜は軍港の灯台の上に佇んでいた彼女といくらかの言葉を連ねるのであった。
全文
全文
「とにかく私は反対だ!初霜と提督が付き合う事なんて!」
「わらわはそうは思わんぞ。こやつならば初霜をどこぞの馬の骨にやるよりかは信頼出来る。それに義弟が増えるというのもまた一興じゃろ。」
「義弟も何もまだ二人は結婚なんてしてないだろ。」
「『ケッコンカッコカリ』なるものならしたらしいがのぅ…まぁ、カッコカリがつこうがつくまいがわらわは提督がこのまま初霜と関係を持って逃げる事などしないと思っておるし、させないが。」
「…子日も初春と同意見かな。それが初霜の答えならそれで良いじゃない。」
「私が言ってるのは初霜が提督と付き合うのは色々と問題があると…」
「お主が初霜の年齢の問題を言っておるのなら問題はあるまい?わらわ達は皆大正・昭和生まれの婆さんじゃぞ?それにこやつらはお互いを好いておる。それをわらわ達が邪魔するのも野暮じゃろ…」
「子日知ってるよ。このゲームの登場人物は全員18歳以上です。ってやつでしょ?」
「実年齢の問題では無い!あと子日姉は少し黙っててくれ。」
かれこれ30分は同じ様なやり取りが続いている。議論が長くなっている原因は私達の付き合いを認めている初春姉さんと認めていない若葉の対立のせいである。子日姉さんはわりとどうでも良い様で私が幸せならそれで良いじゃない。というスタンスである。
私の保護者である姉達への報告と改めての挨拶を兼ねて用意した場である会議室に提督と共に来たのは良いが、開幕これでは先が思いやられる。
「もう良い!勝手にしろ。私は知らん!」
最終的には若葉がこれ以上の議論は不毛、と部屋を出て行ってしまった。そういえば若葉は私が提督に対する恋心を相談した時も反対していた。
「すまぬのう。じゃが、あやつはあやつでお主らの事が心配なんじゃよ…分かってくれ。」
「それに関しては気にするな。若葉の気持ちを考えれば当然だろうし罵倒にも慣れた。」
私の予想通り私達がこういう関係なのが明るみに出るのに時間は掛からなかった。大体青葉のせいである。これだから嫌いなのだ、ブンヤって奴は。
今でこそ多少落ち着いたが発覚直後は鎮守府内がお祭り騒ぎになった。もし、私達がすでに肉体関係になっているとスクープされていたらお祭り騒ぎを通り越してレイテ沖海戦再現祭りになっていただろう、要するに大惨事である。
が、青葉がまだ嗅ぎ付けて無いのか、それとも嗅ぎ付けたがその後の影響を考えて発表を自粛したのかは分からないが、それに関してはまだ特に騒ぎになっていない。もっとも、初春姉さんは何となく察しているようである…長女の勘というやつだろうか?
ちなみに私達の関係を聞いた艦娘の反応は大方4つに分かれる。素直に祝福してくれる娘。無関心な娘。私達の関係に否定的な娘。とりあえず提督を罵ってくる娘。この4つである。ちなみに4番目に該当する娘は曙とか満潮とかである。まぁ、いつもの面子と言えばわかるだろう。とりあえず曙の提督の呼び方が「クソ提督」から「ロリコンクソ提督」になった。
前世の事を考えると私より大和や矢矧の方がよっぽど年下なのだが、艦娘に転生した時にこの姿になってしまった事を恨むしかあるまい。
「提督よ、わらわから一つ約束がある。」
「何だ?」
「…初霜を泣かすような事をするでないぞ。大切な妹を傷つけ泣かすような事があればわらわが承知せん。」
「子日とも同じ約束して。」
「それはわかっている。誓うよ。」
「…なら良い。妹を頼むぞ。」
「任せてくれ。必ず幸せにしてやる。」
「…提督。恥ずかしいですよ。」
嬉しいが、はっきり言われるとなかなかこそばゆい。
「ふむ、ところで提督よ。初霜と一緒になるという事はわらわ達の義弟になるという事じゃ。」
そう言って初春姉さんはニヤリと笑う。
「今後はわらわの事を「姉さま」とでも呼んで慕うと良いぞ。なに、執務中は軍の規律もあるからそう呼ばなくても良いが。」
「っ!?」
「子日は…お姉ちゃんって呼ばれ方が良い!」
提督が動揺している。義理とは言え弟になるわけだし当然と言えば当然なのだが一応上官と部下の関係もあるし、何より姉さんの事を初春姉さまと呼んでいる提督は違和感しかない。
「は、初春姉さま…」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…ふむ、想像以上に気持ち悪いのう…」
「呼ばせといてこの言い草か。なかなか君も残酷だな。」
「冗談じゃ、冗談。いや、無論そう呼びたいなら呼んでも良いが…」
「遠慮させてもらうよ。」
「えー、子日は提督に『子日お姉ちゃん』って呼んで欲しいよ。」
初春姉さんと違い子日姉さんは限りなく天然でやっているから質が悪いと思う。
と、まぁ姉妹への挨拶は無事済んだ。だが、私にはまだやる事がある。
姉さんや提督達と別れ目的の人物を探す。彼女は軍港の灯台の上でたたずんでいた。
「ここに居たのね。若葉。」
「何の用だ?愛しの提督とイチャついてれば良いだろ。」
「…あんな風に飛び出していかれてほっとける訳無いでしょ…」
「余計なお世話だ。」
「悪いけど私はお節介な船だからね。迷惑がられようが、人の恋路を邪魔する意地悪な姉が相手だろうがほっとけないのよ。」
「…お人よしだよ、お前は。」
「褒め言葉として受け取っておくわ。」
そして私は若葉の横に立つ。
「…」
「…」
しばらく沈黙が続く。先に沈黙を破ったのは若葉だった。
「なぁ、初霜…私は意味も無くお前と提督がそういう関係になるのに反対しているわけじゃないんだぞ。」
「…へぇ。何かご大層な理由でもあるのかしら?」
「…怒ってるのか?」
「さあね、まぁ今までずっと人の恋愛感情を否定されてきたからね。意地悪な姉に虐げられるシンデレラの気持ちが良く分かったわ。」
「分かった分かった。私が悪かったよ。」
憎まれ口を叩きながらも私が聞いてくれている事を確認して若葉は続ける。
「…私が一番恐れている事はだな…お前が提督と付き合うのは良い。だがこのご時勢だ…どちらかが先に死ぬ可能性もある。それを受け入れる覚悟がお前達にあるのか。と、心配になってな。」
「…」
「…大切な物を失って壊れる様な事にはなって欲しくない。お前にも、提督にも…もし後追い自殺なんてされて困るのはこっちだしな。」
「…私もそれについては告白前に何度も考えたんだけどね…」
私は言葉を紡いでいく。
「…覚悟はあるわ。若葉の言うとおりこのご時勢だからね、どっちかが先に死ぬかもしれない。」
もっとも、もしそんな事になったらワンワン泣いて数日は塞ぎこむだろう。が、流石に若葉の言う通り後追い自殺なんて馬鹿な事はしないと思う。多分。
私は言葉を続ける。
「でも、だからこそ私は生きているうちに成せるべき事をしたいのよ。若葉も雪風ちゃんの最期は聞いてるでしょ…不沈艦を謳われた彼女も日本に帰還する事は出来なかった。人や船の最期って本当にあっさり訪れるからね。もしかしたら私も次の出撃で機雷踏んで沈むかもしれないし、深海棲艦を狩りつくして戦争を生き延びても帰還途中に事故で死ぬかもしれない…」
余談だが、雪風改め丹陽は戦後しばらく台湾で旗艦を務めていたが退役にあたり日本へ返還される話があったらしい。だが、直前で台風による損害で破損。そのまま現地で泣く泣く解体され錨と舵輪だけが日本に帰って来たそうだ。スクリューは台湾で保管されているらしい。もっとも以前雪風本人に無念ではなかったか?と聞いたら「日本も台湾も雪風にとっては大切な祖国ですから結果的にはこれで良かったんですよ。」と言っていたが。
「…でも、死ぬ時に後悔はしたくないのよ。これは一度前世で沈んだからはっきりと言えるわ…あの時は後悔と無念しかなかったから。」
正確には私の最期は大破着底だがあの時は竜骨がへし折られ、船として死んだも同然だったから沈んだようなものだ。
「それがお前の答えか…」
「ええ。もちろん死ぬつもりは無いけどね。」
私もあっさり沈むつもりは毛頭無い。仮にそうなりそうでも前世の様に最期まで抗いきってやるつもりだ。
「…」
私の言葉を聞いてしばらく黙っていた若葉だが意を決したように口を開いた。
「お前の覚悟は分かった。提督と付き合うことを私も認めよう。」
「…ありがとう。」
「ただし条件がある。死ぬなよ、お前達二人が生きて幸せになる事が条件だ。」
「前にも言ったでしょ。私はこれでも幸運艦なのよ。」
「余計なお世話だったか?」
「いえ、若葉の言う通り必ず生きて提督と添い遂げる。それを改めて決意させてもらったわ。」
「そうか。悪くない心意気だ。」
と、言って若葉は笑った。
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ VS提督LOVE勢の巻 前編
概要
この作品の原文は豚小屋版、なんJ版双方の収録から抜け落ちているため、我々がこの作品を読むことは現時点では不可能である。これはオメガ文学全52巻の内、名前だけが伝えられるのみで本文の現存しない唯一の作品である。現在これに関する記録として残っているのは彼のpixivアカウントが現存していた時期にこの作品を読んだ豚小屋民が投下した、大まかなあらすじ[2]のみである。
820 :Please Click Ad !!@Reproduction Prohibited@転載は禁止 (マグーロ 3ab6-ZV8T) 転載ダメを消してはダメ改変もダメc2ch.net:2015/10/10(土) 14:53:28.76 ID:w8JUSW3J01010 転載禁止(´・ω・`)確か金剛が出てきて 転載禁止(´・ω・`)御存知の通り提督ラブだから、ケッコンした初霜のラブ具合を見極めるために決闘とかそんなのだった
ケッコンカッコカリ~初霜の場合~ VS提督LOVE勢の巻 後編
あらすじ
金剛率いる榛名、大鳳、瑞鳳、伊168、加賀の艦隊と初霜率いる大和、雪風、比叡、赤城、霞の艦隊は「勝利した陣営の人間が提督と共になる権利を獲得できる」というルールのもと演習を行い、初霜らはこれに辛勝する。相手方艦隊は二人の関係を認めることとなったが、同時にそのリーダーである金剛は、提督を諦めることはないという意思を表明した。
全文
全文
食堂
「さー、張った張った。」
飛鷹が食堂に行くと聞きなれた声が聞こえた。この声の主は恐らく彼女の姉妹艦であり、相方である隼鷹の声だ。一応進水日的に言えば飛鷹の方が姉だが、海軍の記録上は隼鷹の方が1番艦だったりしててややこしい。だが、まぁ今はそんな事はどうでも良い。問題は暇な重巡や軽空母達と共になにやら盛り上がっている事だ。
「何やってんの、隼鷹…?」
「おう、飛鷹か。いやー、皆で今日の金剛と初霜の演習、どっちが勝つかで賭けやってたんだ。飛鷹も入る?」
案の定ろくでもない事だった。というか隼鷹所属の彩雲隊が周りで上空待機してるけどそれで実況でもするつもりだろうか…?
「私は遠慮しとくわ。ていうか隼鷹、こんな事が加賀さんや提督にバレたらまたお説教よ?」
「ただでさえ娯楽の少ない鎮守府暮らしなんだしこれくらい良いじゃん…ここに居る連中が黙ってりゃ良いことさ。それに加賀は出かけてるし提督は今それどころじゃ無いだろう。」
「勝手にしてよ。私はもうアンタの連帯責任でお説教されるのは嫌だから。」
「まぁ、こっちも無理に参加しろとは言わないよ…でも…」
と、言って隼鷹はニヤリと笑った。
「今日の演習、多分面白い事になるよ。自慢じゃないけどアタシの勘は結構当たるんだ。」
執務室
先程から提督はそわそわと落ち着きが無い。この演習の結果によって今後の展開が大きく変わるので当然といえば当然なのだが。
「…提督、少しは落ち着いたらどう?」
とうとう、秘書艦の矢矧に注意されてしまった。
「ああ、すまん。俺が一番落ち着いてなきゃいけないのは分かってるんだが、どうもな…」
「こういう時にこそどっしりと構えなきゃ…それにあの子達なら大丈夫。私が保証するわ。」
矢矧はそう言って提督を落ち着かせる。
ちらっ、と時計を見る。現在の時刻は15時48分。予定通り進んでいればそろそろ開戦するはずだ。
「しかし、あの面子で私だけはぶられるってのもまた悲しいわね…信頼無いのかしら?」
若干不安そうに矢矧が言う。演習参加者の内、赤城と比叡以外の4人は坊ノ岬沖海戦に参加した艦である。そして現在鎮守府にいる坊ノ岬沖海戦組5人のうち唯一今回の演習に呼ばれていないのが彼女である。矢矧が自分が遠ざけられてるのではないか?と不安に思うのは当然であろう。
「いや、昨日初霜に聞いたが当初は君も誘うつもりだったらしい。だが、比叡が駄々をこねたらしくてな。」
このまま溝が出来るのも考え物だったのでひとまずフォローに回る。
「あぁ、そういう事だったのね、心配して損した。」
「分かってくれたか?」
「ええ。ところで初霜に聞いたって事はやっぱり…ベッドの中で…?」
「…お前は何を言っているんだ…?」
「冗談よ。それはともかく提督も状況は気になるでしょ?零式水偵飛ばすわね。私も結果が気になるし。」
カタパルトに零式水偵をセットしながら矢矧は言う。
「…あぁ、頼む。」
火薬式のカタパルトから勢いよく零式水偵が射出される。二人は執務室の窓から飛んでいく零式水偵を見送りながら初霜達の武運を祈った。
演習海域
「ちょっと不味いことになったわね…」
私は脇にいる霞に呟く。
「今更そんな事言ってもしょうがないわ。やれるだけの事はやりましょう…」
私の不安の原因は金剛さんの艦隊のメンバーにあった。演習開始前に相手のメンバーと顔合わせをしたが、参戦している艦娘は金剛さんに榛名さん、大鳳さんに瑞鳳さん、そしてイムヤさんである。ここまではある程度予想が出来ていた。一航戦の錬度なら多少数的不利があっても大鳳さんや瑞鳳さんの航空隊は十分相手出来るし、私達も攻撃はある程度回避出来る。後はイムヤさんの雷撃を警戒しながら落ち着いて対処すれば良い。しかし問題は6人目の艦娘にあった。
「加賀さんが敵に回るとはね…」
大和さんも不安そうに呟く。
「加賀さんの航空隊相手に私も何処まで対処できるか…かくなる上は先手必勝。先に敵を見つける事に全力を尽くしましょう。」
先程から赤城さんは彩雲を飛ばし、電探を装備している艦娘はそれを起動させている。既に戦闘は始まっている。通常演習のルールではお互いの初期位置は知らされない。そこから各艦隊の偵察機や電探を使って相手を発見する事から始まる。その後は模擬弾を使用しての砲撃戦と雷撃戦だ。今回は空母がいるので状況によっては戦闘機同士のドッグファイトと対空戦闘を行うかもしれない。対空機銃を搭載してきて良かったと思う。ちなみに機銃の操作は艦娘の意思で行うのではなく、それを操作する妖精さんがいる。
「でも…何で加賀さんが向こうにいるんでしょう?雪風は加賀さんも提督狙いとか聞いた事がありません。」
雪風が比叡に聞く。
私も加賀さんが提督に対して恋愛感情を抱いているという話は聞いた事が無い。女性ばかりの職場なのでこの手の噂はすぐに広まるものだが、加賀さんに関してはそういう浮ついた話は聞いた事が無かった。
「…可能性としては…あの人風紀とかにうるさいからそれで反対してるんじゃない?」
「あー、それはあるかもしれませんね…」
この場合比叡さんの予想が一番可能性があるだろう。加賀さんは鎮守府や艦隊内の風紀に関して特にうるさい。飲兵衛な隼鷹さんなどはしょっちゅうお説教されてるという。聞いた話によるとこの加賀さんの性格は前世によるものらしい。
何でもかつて「航空母艦」加賀の風紀は特に乱れていたらしい。大抵艦内の風紀というのは大型艦になるほど乱れるものだ。これはその分人がたくさん乗っているので仕方が無い事である。その中でも加賀の治安の悪さは特に酷かったらしく銀蝿が公然と行われたり、いじめやしごきのせいで脱走兵や自殺者が特に多く出たらしい。逆に私達駆逐艦などの小型艦、とりわけ私や雪風や霞の様な長く生き残った艦だと乗組員も皆気心が知れた仲になっており上から下まで一枚岩な事が多かった。
おそらく「艦娘」である加賀さんが風紀に厳しいのはそういう重い前世の影響なのだろう。だからといって私は提督の事を諦めるわけにはいかない。
『こちら彩雲3番機より赤城へ、敵艦隊発見!戦艦2、空母3。方位―』
「…どうやらこちらの方が早く動けたようですね。」
そう言いながら赤城さんは艦載機の発艦に取り掛かる。彗星、流星などが飛び立っていく。戦闘機隊は警戒も兼ねて既に発艦している。
「見つけたのは5隻だけですか?」
と、比叡さん。
「イムヤさんはもう潜ってるんでしょうね。」
それに対して大和さんが返事する。
「潜水艦は嫌いだわ…霧が出てない分まだマシだけど…」
そう霞が忌々しそうに吐き捨てた。
そんな中赤城さんの哨戒中の戦闘機隊から連絡が入る。
『烈風13番機より赤城へ、敵偵察機発見。塗装からして瑞鳳の所属機だろう。』
空母所属の艦載機は塗装で何処の空母の所属か分かる様になっている。
「倒しましたか?」
『いや、逃げられた。撃墜判定も出てない。多分こっちの位置もバレただろうな…』
「…了解です。しばらくしたら敵機も来るはずです。それまで爆雷撃機の護衛以外は上空待機しててください。」
『烈風13番機了解。加賀の連中か…厳しい戦いになりそうだ…』
「…これで条件は五分五分。航空機の数からいって若干こちらの不利ですね…」
「対空戦闘用意!」
偵察機に発見されて数十分後、上空では戦闘機同士の戦闘が行われている。赤城所属の航空隊はよく戦っているが多勢に無勢。こちら側の不利は否めない。
私は兵装を動かしている妖精さんに命令する。艤装の上では既に妖精さん達がスタンバっており発砲許可を今か今かと待っていた。
「何機か抜けてきましたね…」
雪風の視線の先ではこちら側の戦闘機隊の囲みを突破した艦攻、艦爆が飛んでいる。他艦も対空戦の準備は完了しているだろう。
「雪風、初霜、ドジるんじゃ無いわよ!」
「霞ちゃんこそ!」
「雪風は沈みません!!」
「撃ち方始め!!」
旗艦である私の声を合図に各艦から対空砲の弾幕が形成された。同時に之字運動で敵機からの爆雷撃を回避する。
空爆を避けるのにも中々コツがいる。特に私達駆逐艦などの小型艦艇だと被弾=戦闘不能だから回避に関しては日夜研究されている。艦によって回避の仕方はまちまちで、艦ごとの個性が最も現れる瞬間である。私の場合、敵機が真上に来た瞬間に全速力を出すという回避の仕方が一番得意だ。現に坊ノ岬沖ではこの方法で被弾ゼロ、戦死者無しで生き残ったのだ。前世の私の艦歴の中で一番の誇りはその時の事である。
「闇雲に撃たないで!こっちに突っ込んでくるのだけ狙いなさい!」
私は艤装の上で機銃を撃っている妖精さんに命令する。高速で飛んでいる航空機に銃弾は当たり辛い。なのでひとまず他の僚艦を狙っている敵機は無視し、こっちを狙って機体を晒してくる敵機に対してのみ銃撃を行なわせる。どうせ闇雲に撃っても当たらないので弾薬の消費を抑える意味でもそれは徹底させた。
「何で当てないの!?今のはあなた達なら当てられたはずよ!!」
柄にも無く妖精さんに怒鳴る。すぐ脇を彗星が通過していったが特に弾が当たった形跡は無かった。
「無茶言わないでください!こんな揺れてる中で!」
そう妖精さんに返され少し冷静になった。いけない、熱くなってる…考えてみれば私は先程から之字運動のせいで体を大きく揺らしている。そんな中で動く物に弾を当てろという方が無理だろう。冷静にならなければ…。
だが、この戦いに負ければ提督を、私の愛しい人を誰かに盗られてしまう。そんなのは絶対に嫌だ。それを考えると冷静にはなれなかった。
「こちら初霜。我、損害軽微。各艦の被害状況を報告して下さい。」
「こちら大和。第2副砲と対空砲に何基か破壊判定が出てるけど、まだ戦えます。」
「霞、損害軽微。」
「雪風、同じく損害軽微。」
「こちら比叡。ごめんなさい…魚雷を一発喰らったわ…中破判定。でも戦闘には支障無し。」
「赤城、爆弾の至近弾により甲板損傷…小破判定。」
「皆結構やられましたね…」
敵機の第一波が撤退した所で各艦の被害状況を確認する。戦闘に支障は無いものの、それなりの被害が出ている。大破・轟沈判定の出た艦娘がいないだけマシだろうか。
「ただ、うちの彗星が大鳳に急降下爆撃を仕掛け中破判定、榛名さんを小破判定に追い込んでいます。」
「装甲空母を中破に追い込んでもしょうが無いわ。普通に艦載機飛ばしてくるわよ。」
霞の言う通り、大鳳さんは特別装甲が頑丈に作られている装甲空母なので甲板を破壊しない限り普通に艦載機を放ってくる。状況はこちらの不利だ。かくなる上は接近して戦艦の火力を生かした砲撃戦を仕掛けるべきだろうか…?。敵機が補給を終え、第2波が来るまではまだ時間がある。
「…各艦に通達。このまま敵艦隊に接近し砲撃戦を仕掛けます。」
「分かったわ…魚雷の安全装置外すわね。」
「雪風はいつでも行けます。」
「砲撃戦ならまだ気合入れればやれるわ!」
「砲撃戦ですか…大和の46センチ砲が騒ぎますね。」
「こちらも甲板の応急修理が終わり次第、護衛機を飛ばします。」
各艦は私に従ってくれた。皆、目に闘志が宿っていた。
「あっ、砲撃戦始まったっぽい。」
「夕立ちゃん、状況はどうですか?」
「まだ五分五分っぽい。」
「なら、まだ私達の出番はまだね。でも、不測の事態に備えて兵装の安全装置は外しておいて。」
「了解です。」
「了解っぽい。」
砲撃戦が行われている海域から少し離れている所で双眼鏡を片手に演習を見守っているのは霧島、夕立、綾波の3人である。鎮守府きっての武闘派である彼女達は提督からじきじきに与えられた任務の為この海域に来ていた。その任務というのは…
「『不測の事態に備え演習を観戦、状況によっては介入し鎮圧せよ。』ですか…しかし、そんな事起こるんでしょうか?」
「綾波、油断はしない方が良いっぽい。」
「そうね、普通演習なら危険は無いけど、今回は事情が事情だから…」
「…そうですね。」
この3人は今回の件については比較的に中立派なのでお呼びがかかった訳だが、姉達3人が潰しあっているというこの状況を霧島はどんな風に見ているのだろう。と綾波は思う。
「まぁ、私は殴り合いくらいなら静観するつもりだけどね。雨降って地固まるって諺もあるし。」
別に特に心配したり心を痛めていたりはして無かった。
「霧島さんはダコタさんともそれで分かりあったっぽいしね。」
「まぁ彼女とは…良いお友達よ。」
「…ああ、『強敵と書いて友と読む』みたいな…」
「…否定はしないわ。」
霧島が艦娘に転生した直後の話である。ある時、米国艦隊との合同演習が行われた。アメリカと日本は現在同盟国同士であり、深海棲艦という新たな脅威に対してそういった事が行われるのも当然の流れであった。事件はそこで起きた。あろう事か霧島とサウスダコタが運悪く遭遇してしまったのだ。二人は前世で殴り合いとも言えるほど近距離で砲撃戦を行っており、仇敵とも言える間柄である。当然の事ながらメンチの切りあいの後殴り合いが発生。エンタープライズやミズーリにアルバコア、陸奥に金剛に加賀といった両国の艦娘達が文字通り命がけで止める事になった。その後霧島とサウスダコタはそれぞれの旗艦である長門とペンシルベニアにこっぴどく叱られた後、二人して独房行きになったという武勇伝を持っている。しかし、この事がきっかけになって二人の間では奇妙な友情が芽生えた。少年漫画にありがちなパターンと言えば分かりやすい。さらに、この時の危機を共に乗り越えたという事で日米の艦娘間にあった溝が少し解消されたという嬉しい誤算もあった。
「とにかくそういう事だから彼女達には存分に発散してもらいましょ…無論刃傷沙汰になったらすぐ止めに行くけどね。」
「分かりました。」
「分かったっぽい。」
「撃ち方始め!」
既にお互いの姿が見える所まで接近した私達はすぐさま砲撃戦に入る。敵空母隊から何機か艦載機が上がってくるが、まだ補給が完全でない様で数は少ない。そのまま同航戦にもちこみ砲を放った。
「各砲門斉射開始!気合、入れて!」
「砲撃戦ですか…腕が鳴りますね。」
比叡さんと大和さんが砲撃を開始した。負けじと向こうからも金剛さん、榛名さんが反撃を開始する。私達駆逐艦は敵空母から上がってくる護衛機の相手と隙があれば魚雷を打ち込む。
「榛名!そこをどいて!」
「いくら比叡お姉さまでもここは抜かせません!」
比叡は先程から榛名と激しく戦っている。だが、中破している分不利なのは否めない。そうしているうちにも飛んできた砲弾が比叡に命中する。
「ちっ、航行不能判定!でも…せめて榛名だけでも…」
「比叡さん!!」
「来ては駄目!」
見かねた雪風が比叡のフォローに入ろうとするが比叡はそれを拒否した。
「私はもう駄目。雪風まで巻き添え喰らうわよ!」
「ですが…!」
「無事な大和さんと赤城さんの支援に行きなさい!」
「…了解。」
そう言われて雪風は比叡から離れる。これで良い、と思う。死に掛けている自分の為に無事な雪風まで危険に晒すわけにはいけない。
「せめてもう一撃だけでも…」
最後の一発になるであろう砲弾を主砲に込め発砲した。次の瞬間、榛名の砲撃が比叡に命中し、比叡に撃沈判定が出た。
やれるだけの事はやった。と、比叡は思いながら後ろ髪を引かれる思いで演習海域より退避する。演習で撃沈判定の出た艦娘は演習場から撤退する決まりになっている。
「さすが比叡お姉さまです…」
「榛名!無事デスか?!」
「はい、大丈夫です。でも…3番主砲に直撃弾。使用不能です。」
「無理しちゃNOですよ!」
比叡が最後に放った砲弾は見事に命中し、榛名を中破判定に追い込んでいた。
「加賀!大鳳!瑞鳳!補給はまだ終わりませんカ?!」
「こちら加賀。行けます。」
「大鳳。もう少し待ってください!」
「こっちは準備できてるよ。」
「すぐに発進させてくだサーイ!」
そう金剛が言った瞬間、加賀に砲弾が命中した。
「…やられました。甲板破損、ごめんなさい。航空機発着出来ません…」
「正規空母をone shotで大破させるこの砲の破壊力…大和デスね…」
金剛が苦虫を噛み潰したような顔になる。一航戦の加賀の戦闘不能は痛い。
「加賀さんに命中確認。中破ないし大破!」
「ふぅ…これで少しは楽になりますね…」
「初霜、油断は禁物よ。まだ沈めて無いし空母はまだ2隻いるわ。」
私と霞は大和さんの脇で援護を行っている。比叡さんがやられた時はどうなるかと思ったがこれで状況は五分五分になった。
「日が暮れる前に加賀さんに止めを刺しましょう。航空機、全機発艦!」
赤城さんはそう言って航空機を放つ。姉妹の様な加賀さんが相手でも敵に回った以上、そして間宮のタダ券が懸かっている以上容赦は無い様だ。ちなみにタダ券は1枚は協力してくれると言った時に渡し、残りの2枚は赤城さんがしっかりと活躍したら渡すという契約である。
『敵機、発艦を開始!』
赤城さん所属の彩雲から連絡が入る。大鳳さんと瑞鳳さんの艦載機が完全に補給を完了した様だ。
「もうすぐ日が暮れます。それまで持ちこたえて!」
私はそう言って味方を励ます。夜間戦闘機を使用する空母娘はこの鎮守府には居ないので日が暮れると空母はただの置物になってしまう。提督も上に夜間航空機の開発を要請しているが、開発は難航しているらしい。だが、この場では夜間航空機が配備されていない事を感謝した。
『流星隊より赤城へ!我敵空母加賀を撃沈す。』
「赤城より現在上がっている各機へ、よくやりました!日が暮れるまでもう少し暴れて良いですよ。」
『了解!』
「…初霜ちゃん。これでタダ券はもらえますよね…?」
「見事です。契約通り帰ったら赤城さんの部屋に届けておきます。」
「楽しみですね。」
赤城さんの航空隊が加賀さんに止めを刺したらしい。上空では大鳳、瑞鳳の航空隊と赤城さんの航空隊の戦闘が行われているが、錬度に勝る一航戦の方が有利だった。
太陽が水平線に沈み始めている。夜戦になれば駆逐艦でも十分勝機がある。と、金剛さん達からの砲撃を避けながら私は思った。
「何を頼もうかしら…アイスに羊羹…ラムネも捨てがたいですね…」
「赤城さん…まだ戦闘中ですよ…」
「…」
霞は何となく嫌な予感がしていた。
その原因は先程から何処かに潜っているだろう潜水艦伊168の事だった。潜水艦トラウマ組の一人である彼女はその事が頭から離れない。赤城は慢心しているが、もし自分が伊168の立場ならそこを狙うだろう。目測を誤りやすい夕暮れ時とはいえ、腕の良い潜水艦なら魚雷を当てる事など造作も無い。
その時だった。
積んできたソナーが潜水艦の放つピンガーの音を確かに感知した。場所は赤城の真下。
「赤城!危ない!」
言葉よりも体が早く反応する。すぐさま伊168の潜んでいると思われる所に爆雷をばら撒く。
だが、一足遅かった。ソナーが伊168の撃沈判定を示すが模擬魚雷は既に放たれていた。
「雷撃!?真下…?」
赤城は回避行動をとるが正規空母の様な大型艦艇は俊敏には動けない。4発放たれた魚雷のうち2発が赤城に命中した。
「赤城さん、大丈夫ですか?」
「…舵およびスクリューに破壊判定、航行不能です。雷撃処分ものですね…」
「なんであそこで油断したのよ…?」
「慢心しました…」
「気づかれないと思ったんだけどなー。」
そう言って伊168が浮上してきた。
「イムヤさん…いつから私の真下に居たんですか?」
「比叡さんがやられた辺りかな…」
「ストーカーか、アンタは…」
「こんなのヨークタウンを殺った時に比べれば大した事じゃないわ。でも、撃沈判定か…まぁ加賀の仇はとったわ!」
そう言うとイムヤさんは再び潜水した。恐らく海中から今後の展開を見守るつもりだろう。だが日が暮れる前に倒せて良かった。日が暮れて闇に紛れられたら潜水艦の発見は極めて困難になる。
「これで4対4ですか…」
雪風が心配そうに言う。
「でも、もう日が暮れるわ。そしたら私達の出番よ。」
何はともあれここまで生き残った。駆逐艦の本領発揮はこれからである。
「oh、Sunがdownしますか…出来れば昼間に決着をつけたかったのですが…」
「お姉さま、大鳳さんと瑞鳳さんを下がらせましょう。」
「そうですね…大鳳と瑞鳳は艦載機回収後後方へback。ケリは私達がつけマス。」
「大丈夫なの?榛名さんは中破してるし、金剛さんも何発か被弾してるけど…」
「瑞鳳、私達は同志であると共に提督を巡るrivalなんですよ。余計な気遣いはNO,Thanksデース。」
「それはもっともだけど私達は今同じ艦隊の所属。心配するのは当たり前です。」
「仲間ってやつ?」
「大鳳、瑞鳳…」
「まぁ、私達は夜は置物だしね。素直に下がらせてもらうわよ。」
「金剛さん、榛名さん、必ず勝って下さいね。そうしないと次のステージのあなた達との提督争奪戦にも移れませんから。」
「OK、わたしに任せてくだサーイ。榛名、行きまショー。」
「了解です。」
「大和より初霜ちゃん、霞ちゃん、雪風ちゃんへ。こちらも可能な限り援護しますが、夜戦の主役はあくまでもあなた達です。この勝負はあなた達にかかっていると言っても過言ではありません。…初霜ちゃんの為にも必ず勝ちましょう!」
そう言って大和さんが私達に激を入れる。
「もっと勇ましく『非理法権天』とでも言ったらどう?」
いつもの調子で霞は大和さんの言葉に横槍を入れる。
「昔みたいに特攻に行くわけじゃありませんから…全艦無事で勝利したいのであえて言いません。」
「まぁ、アンタらしいわ。」
そう言って霞は微笑んだ。
「初霜ちゃん、準備は大丈夫ですか?」
「こっちはいつでも良いわ。ところで雪風ちゃん、本当に照射役やる気なの?」
雪風は手に神通さんから借りてきたと思われる探照灯を持っている。探照灯は夜戦における必須装備である。これで敵を照らして味方の攻撃を集中させる。電探と併用すればより高い戦果を期待できる。反面、照射役の艦は敵から狙い撃ちされるというデメリットもあり、現に前世で暁や神通などはそれが原因で轟沈している。
「心配しなくても大丈夫です。雪風は運が良いですから。」
頼もしげに雪風は返した。
「さぁ、初霜、雪風、勝ちに行くわよ。」
霞の言葉を合図に私達は進撃を開始した。
時間はそれほど経っていない。まだ金剛さん達はこの近辺に居るはずだ。
「それらしいものを見つけたらすぐに報告して下さい。」
「…っ、こちら大和。電探に反応!方位―きゃっ!」
次の瞬間、砲弾が大和さんに命中する。どうやら先手は向こうに取られてしまったらしい。発砲炎が見えた辺りにそれらしき陰がはっきりと二つ見えた。
「こちら雪風、居ました!あれです!」
「大和さん!被害状況は!?」
「直撃です。第一主砲破損判定!大破です。」
「アンタは下がってなさい!あいつらは私達が始末する!」
そのまま全速前進。私と霞と雪風は闇に紛れて金剛さん達に接近を試みる。私は近づきながら牽制の魚雷を2発放つ。この距離ではまず当たらないが牽制としては十分だ。
「霞ちゃん、雪風ちゃん、あと魚雷は何発残ってる!?」
「こっちは3発よ!」
「雪風は2発です。」
「こっちは2発。十分ね…」
不思議と気分が高揚した。なんだかんだいっても私にも水雷屋の血は流れているらしい。
「大和、中破ないし大破。」
「nice shot!さすが私のsisterデース。」
「光栄です。」
「ですが、問題は残りのdestroyersデス。闇に紛れられたら対処出来ません…」
「っ!敵艦発見!一隻こちらに向かって来ます。副砲、撃てぇー!」
まだ主砲の次弾の装填が終わっていない榛名は副砲で迎撃に入る。何発か撃った中で一発が敵駆逐艦に命中する。だが、まだ撃沈判定は出ていない。
霞は単艦で榛名の元に向かっていた。これは彼女が手負いの戦艦なら一人でもやれると判断した為である。まだ戦闘力を残している金剛の元により多く戦力を割きたかった。だが、現実は厳しい。闇に紛れて至近距離から魚雷を打ち込むつもりだったが、接近中に榛名にバレてしまった。何発か砲撃を喰らい、一発が命中。中破判定が出ている。だが、お人よしで優しくて腕の立つ友の為にもこの程度で諦めるわけにはいかない。幸い魚雷発射管はまだ生きている。息を吐きながら榛名に狙いを定めた。
「…沈みなさい!」
もう少し接近したかったが、榛名の砲がこちらを狙っている以上仕方が無い。恐らく現在榛名の砲はリロード中だ。この機会を逃すわけにはいかない。
腕の魚雷発射管から3本の魚雷飛び出した。榛名は回避行動に移るが遅すぎるし、近すぎる。数秒後には魚雷が命中し榛名に撃沈判定が出た。
「榛名…っ!」
金剛が妹の名を叫ぶが、撃沈判定が覆るわけも無い。すぐさま金剛は気持ちを切り替え目を自分の周りに向け、こちらに接近してくる駆逐艦2隻に狙いをつける。闇のせいで見辛いが恐らく手前に居るほうが背格好からして雪風だろう。初春型と陽炎型を比較した場合、圧倒的に陽炎型の方がハイスペックだ。初霜の方は旗艦だが性能はあまり良いとは言えない。まずは雪風を撃破し、初霜の方は後でゆっくり料理してやれば良い…金剛は即座にそう判断し主砲の狙いを雪風につけ、発砲した。
放たれた砲弾は見事雪風に命中した。続けて2打目も発砲する。次弾も命中した。駆逐艦が戦艦の主砲を2発も喰らえばタダでは済むまい。
「雪風ちゃん!?…くっ!」
前方にいた雪風に金剛さんの砲撃が命中した。航行不能判定が出た為かその場で停止してしまう。だが私はそれに構わず前進する。腰の魚雷管に装填されている2本の魚雷が金剛さんに対抗しうる唯一の「槍」だ。外せばそこで終了である。金剛さんの副砲口と目が合ったがそんな事を気にしている暇は無い。主砲は先程雪風に向け放たれたが副砲はまだ残っている。威力の低い副砲と言えど駆逐艦の装甲など紙に等しいので命中すれば大ダメージである。一方でこちらの魚雷も直撃すれば一撃で戦艦でも撃沈しうるだけの威力がある。現に前世で金剛は潜水艦シーライオンⅡの放った4本の魚雷のうちの2本が原因で轟沈しているのだ。この勝負はより早く、より正確に攻撃をした方が勝つだろう。
次の瞬間雪風の探照灯が金剛さんを照らした。おかげで狙いがつけやすい。
私は狙いをつけ魚雷を発射する。そして金剛さんからも砲撃が飛んでくる事を考え身構える。だが、金剛さんから砲撃が飛んでくる事は無かった。
「what!?」
いきなり探照灯で照らされた。副砲によって初霜を攻撃しようとした矢先の事である。探照灯による目潰しのせいで砲撃が出来ない。
「何処からデスか?雪風は沈めたはず…沈めたはず…?」
金剛は、はっ、となる。確かに雪風に砲撃は命中したが撃沈判定は出ていなかった。だが、あそこまでダメージを受けていたら探照灯にも普通破壊判定が出るはず…
そんな事を考えているうちに魚雷の発射音が聞こえた。目がやられている為、音でどこから飛んでくるか予想して回避しなければいけない。
「外れてくだサイ!」
しかし、金剛の願いに反し2発の模擬魚雷が金剛に命中した。
一発は舵とスクリュー付近に命中。両方に破壊判定が出る。そして金剛に妖精さんが撃沈判定を告げた。
「勝った…?」
妖精さんがこちらの勝利を告げた後、私はしばらく呆けていた。実感が湧かない。敵旗艦撃破という事でこちらに軍配が上がった様だ。
「おめでとうございます初霜ちゃん!」
「これでアイツは名実共にアンタの物よ。」
雪風と霞が駆け寄ってきた。大和さんや赤城さんや比叡さんもこちらに来るのが見える。
「…雪風ちゃん、今回の勝因は最後の照射のおかげよ。ありがとう。」
私は雪風の手を握って感謝を伝える。
「実はあの時雪風の武装は全部破壊判定が出てたんですが、探照灯だけは運よく生きてたんですよ。」
「さすがの豪運ね…アンタらしいわ。」
「幸運艦の名は伊達じゃ無いわね。」
そう言って私達三人は笑いあった。
「oh、無念デース。」
金剛さん達も近づいてくる。
「金剛、約束通り初霜と提督の関係は認めてくれるんでしょうね?」
「…約束は約束デース。私達も二人の関係を認めまショー。」
他の5人も仕方が無いという顔で頷いた。
問題は金剛が次に言い放った言葉である。
「でも、私は提督の事は諦めまセーン。Never give upデース。」
「なっ!?諦めるって約束じゃなかったの?!」
「霞、私はあの時二人の関係を認めるとは言いマシタ。でも、提督を諦めるとは一言も言ってまセーン!!」
さすが戦艦だけあって転んでもタダでは起きない。正直汚いと思うが確かに勝負を挑んできた時、金剛さんは負けたら提督を諦めるとは一言も言っていない。金剛さんと霞の間で言い争いになっているが金剛さんの性格からいって考えを曲げる事は無いだろう。向こうからは「つまり提督を寝取れば…」とか物騒な事をブツブツ言ってるのが聞こえてきた。これは本当に提督を寝取られないように気をつけねば…Nice boatもといNice destroyerなバッドエンドは私もごめん被りたい。
後ろからはヒエーって叫びも聞こえてくる。比叡さんには本当に同情する。
「私達の出番が無くて良かったですね。」
事の顛末を双眼鏡で見ていた綾波はほっ、と息をつく。
「そうね、多分矢矧が偵察機でも飛ばしてると思うけど一応提督にも詳細を報告しときましょう。無事任務遂行したし間宮のタダ券でも貰えるかもね。」
「間宮♪間宮♪」
恐らくある意味今日一番気を張ったと言える霧島一行も帰還の途につく。
「ところで霧島さん。私こんな写真を撮ったんですが…」
綾波が霧島に記録用に持ってきたデジタルカメラ(防水防塩加工済み)で撮った写真のうち一枚を見せる。
「この彩雲…あそこに居る4人の隊の所属機じゃ無いですよね…?」
「そういえばそうね…この塗装は誰所属のだったかしら…?」
「夕立、それ分かるっぽい。」
「夕立ちゃん、分かるの?」
「それ多分隼鷹さんの所属機っぽい。前一緒に出撃したから覚えてるっぽい。」
「隼鷹の…?でも何でこんな所に…?」
「…脱走兵、とか…?」
「いずれにせよ問題ね。それも提督に報告しておきましょう。」
後日、この写真が決め手となり今日の演習で賭けをやっていた事がバレて隼鷹が加賀からお説教を受けたのはまた別のお話。