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恒心文庫:上川の男

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本文

「……やがて男は抵抗を辞めた。押し寄せる痛みと、快感の波を鎮めようと黙って耐えることに決めたようだ。」
「いかに恵まれた体格だろうと、縛られてしまってはどうしようもない。」
「唇を噛む。甘く見ていた。まさか、北海道まで自分を犯しにくる狂人がいるとは。」
「甘い快楽が押し寄せる。強靭なペニスに身を悶えさせる。」

冷たい風が窓を叩く音を叩く。入れ替わりに、独り言とキーボードを叩く音が止む。
しばらくおいた後、彼は独りため息をつく。いつまで妄想を書き連ねるだけなんだと、虚しいだけだと自分に言い聞かせる。せっかくここまで頑張ったのに。
彼は彼なりに策を巡らしたのだ。どのようにすれば注目されるか、そして……。
試行錯誤を巡らし、ここまで来た。
彼は淫獣であったが…怠惰なナマケモノでもあった。だから、待つ事に決めたのだ。住所を晒し。狂人を探し。後は待つだけだ。もしかしたら彼もまた狂人なのかもしれない。

風がドアを叩くたびにはっとする。インターホンが鳴るたびに身体のどこかが強く脈打つ。そして、その度に空回りしてしまう。
これは恋だろうか。恋にしては胸は妙に寒い。身体は妙に熱い。

もしこれが恋なら…俺は誰に恋しているんだろう?

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