「恒心文庫:〜Ascension〜「赤座あかりちゃんのチンコバッキバキでワロタwww」」の版間の差分

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この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。
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*[[恒辞苑:あ行#赤座あかりちゃんのチンコバッキバキでワロタwww]]
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* [[恒心文庫:~時代劇としての高速道路~地下闘技場の真剣勝負]] - 同一作者の作品
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2021年9月10日 (金) 01:06時点における最新版

本文

「赤座あかりちゃんのチンコバッキバキでワロタwww」

その言葉を初めて聞いた時、その猥雑な言葉の不条理な連結に目眩がした。

「赤座あかり」 「の」 「チンコ」

「赤座あかり」は、確か百合漫画雑誌で連載してた漫画の登場人物。
百合漫画に出てくる主要人物なのだから女性なのだろう。
しかし、その後には「チンコ」とある。女性、に、チンコ。
一体どういうことなのだろうか。女性に男性器は付かない筈。
積み上がる不条理と混乱は、

私を「赤座あかりちゃんのチンコ」に釘付けにした。

         〜Ascension〜

それは、奇妙な始まり。
頭の中では、立て続けに「あのフレーズ」が繰り返される。
嘲笑を含ませながら彼女が持つ筈も無い男性の象徴を賛美する言葉。
理解の及ばない不条理は頭蓋突破の衝撃を伴い幾重にも重なり脳髄を駆け上る。

巡る思考は電撃に似て、二律背反のパラドクスは下へ下へと滑り落ちて行く。
深く、深く、深い深遠なる底に辿り着いたとき、私は、地球の中心から響く
「グロウル」を感じた。それは深く、重く、身体に沁み入るようで、殆ど音としては聴き取れなかった。
その甘美な振動に、私は「地球全体が『あのフレーズ』に白熱している」ということを理解した。

気づけば、そこはジャングルだった。
複雑に入り組んだ樹木、初めて見る花、聴いたことも無い鳥の声、
水面に飛ぶ羽虫に、たまに混ざるコーンとニラ。
初めて来た場所ではあったが、もう既に理解したいた。
青々とした木々のざわめき、流れる河のせせらぎ、虫の羽音、動物の息遣い。
全てが「あのフレーズ」を囁いているのだ。

より深い密林の奥へと進んでいると、
突然、地面から沢山の奇妙なキノコが生えて来た。
迷うことも無く手で触り感触を確かめる。
硬く、長く、太く、熱く、脈動するキノコを感じ、私は満足気に納得を呟く。
突然生えて来たあのキノコは私のなんてことない小さな気付きへの祝福だと確信して、先に進んだ。

晴天、山の頂に立ち地平を見晴らす。
いつの間にか雪の僅かに積もる山頂に辿り着いていた。
雲を突き、厳しく切り立つ断崖の雅に感嘆の声を漏らす。
地上、世俗流れる雲海に洗われ、
天蓋、蒼きスクリーンに映るは太陽の明るきのみ。

周りに見える他の山々に目を遣れば、
聳える山は聳り立つ赤座あかりの陰茎だと知り、
眩き太陽を見上げれば、
太陽の周りからは無数のペニスが伸びていることを知る。
もちろん、自分の手をじいと見つめれば、
ちゃんと10本の「チンコ」が硬く勃起し佇んでいるのだ。

視界のパノラマは完全に陰茎で覆い尽くされ、
一切が「赤座あかりちゃんのチンコ」であることを知った私は、ただ蒼き空を見上げていた。
上昇の気運に身を任せ、立て続けに繰り返される「あのフレーズ」に乗り、
私は地球の歌と共に蒼き空の虚に吸い込まれていった。
美しい「フラジオ」の音色と禍根さえ溶け去るかの様な清廉で。

昇天、虚空に達し____

____どうやら、いつの間にか寝てしまっていた様だ。
開きっぱなしのパソコンには匿名掲示板が映し出されている。
窓に目を遣ると、空は夕焼けで西日が差し込んできていた。

私は、さっきまでの体験を夢だったとは思っていない。
登っていった先で何を見たのかはよく覚えていないいが、
私は確かに理解して、世界はそれに応えてくれたのだ。

「赤座あかりちゃんのチンコバッキバキでワロタwww」
確かめる様に口に出す。

懐かしい響き、ずっと昔から、産まれる前から知っていた優しい言葉。

なんとも晴れやかな気分になったので、外に出てみた。
街をみて、行き交う人を見て、走る車を見て、並ぶ家を見て、

絶句した。
何故あのビル達は陰茎の形をしていない?
何故人は訳の分からないことしか言わない?
何故何処にもチンコが見当たらない?
何故誰も「赤座あかりちゃんのチンコバッキバキでワロタwww」と言わない?

絶望した、混乱した、恐怖した、
何処にも「赤座あかりちゃんのチンコ」は無かった。
チンコの無い生活は考えられない。
陰茎に囲まれていなければきっと寂しさに凍えて死んでしまう。
街はとても恐ろしい場所になっていた。
私は家に引き返して縮こまることしか出来なかった。



そしてわかった。
みんな、かつての私のようにわすれてしまったんだ。
きっとおもいだせる、きっとわかってくれる。
皆に教えなくては。
私は行かなくてはならない。
また、暖かい世界に。

タイトルについて

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