「恒心文庫:グル、グル、グル、グル、グル、グル、あー、グル、グル、グル、グル。」の版間の差分
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それは3ヶ月前の話。 | それは3ヶ月前の話。 | ||
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不思議な話を1つ紹介しよう。 | 不思議な話を1つ紹介しよう。 | ||
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アスファルトに強く叩きつけたときに発生する鈍い音が響くのを最期に涅槃を目指すようになったらしかった。 | アスファルトに強く叩きつけたときに発生する鈍い音が響くのを最期に涅槃を目指すようになったらしかった。 | ||
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弁護士ドットコムから初めて大きな仕事がやって来た。 | 弁護士ドットコムから初めて大きな仕事がやって来た。 | ||
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その時目の前が真っ暗になった。 | その時目の前が真っ暗になった。 | ||
だがそれも案外悪くない。とりあえずやってみるものなのだなとまた彼から教わる。 | だがそれも案外悪くない。とりあえずやってみるものなのだなとまた彼から教わる。 | ||
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風の噂で聞いたのだが、もう一人セミナーに参加した弁護士が突如消えたらしい。 | 風の噂で聞いたのだが、もう一人セミナーに参加した弁護士が突如消えたらしい。 | ||
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== タイトルについて == | == タイトルについて == | ||
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。 | この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。 | ||
== この作品について == | |||
[[弁護士が受けた100万回の殺害予告~突然訪れる危機を回避する方法~]]のセミナー開催を受け、その日の夜のうちに投稿された作品である。 | |||
== リンク == | == リンク == | ||
* 初出 - {{archive|https://ensaimada.xyz/test/read.cgi/rid/1494321666/729-732|https://archive.ph/SXxHM|デリュケー 初心者投稿スレッド☆1 >>729-732}} | * 初出 - {{archive|https://ensaimada.xyz/test/read.cgi/rid/1494321666/729-732|https://archive.ph/SXxHM|デリュケー 初心者投稿スレッド☆1 >>729-732}} |
2022年3月26日 (土) 07:42時点における版
本文
昨日も今日も明日も書類と向き合う日々が続く。
合間を縫ってユーチューブの撮影。忙しない日常が当職が弁護士であることを実感させてくれる。
当職は弁護士だ、お前らとは違う。
自分は上流階級の人間だ。一般人には手も届かない地位を築いている。
弁護士であることで自ずと感じるある種の優越感に当職は満足していた。
仕事終わりに自販機でコーヒーを買ってスーツを脱ぎながらカフェインの香りを愉しむ。
その際に左襟の黄金色の弁護士バッジがふと目に入る。
独特の光沢は当職の煌びやかな日々そのものだと感じる。
弁護士としての一日、それは一般人は一生体験する権利さえない日々の連続がどれだけ素晴らしいものなのか、本当は教えてあげたいけどそれが出来ない。
だってステージが違うのだから。こればかりは残念ながら仕方がない。
ある日、僕は弁護士のみが参加できるセミナーで講演を任されることとなった。
業界の中ではちょっとした有名人の当職は自信満々に約10年の経験を自慢げに語る。
相手がどんな人かを知ろうとすること、それが弁護士としての懐の広さであると教え込む。
もう一人は弁護団ガーって騒いでいたけどぶっちゃけどうでもいい。
当職の知名度もあってかセミナーは弁護士ドットコムがするイベントの中でも最大級の申込者数となったそうだ
司会のそこそこかわいいねーちゃんからそう聞いたときに弁護士の中でも上の位になりつつあることを再度実感できた。
当職はいつしか他の弁護士に自分の子分のように従えたらいいなと思うようになった。
言い換えれば当職が父親で当職に従順なかわいい後輩達は当職の子共、つまり当職をリーダーにして絶対権力をもつ家族のような集団を作りたいと思っているわけだ。
セミナーは当職の予想を遙かに超えた大好評で幕を閉じた。
理想の実現に限りなく近づいている。千里の道もあと百里。人生の禍福の波の好況期。
当職を酔わせてくれる比喩は頭の中で次々浮かんでは消えるの繰り返し。
回想すればするほど、当職の脳は当職を褒め称えて甘やかしてくれる信頼や名誉、地位、資産といったアルコールで泥酔し始めた。
目覚めると赤紫の布きれを着ている。
全裸で寝る当職にパジャマなどあるはずがない。
3畳ほどの薄汚くて外から変な匂いがする小部屋に当職の姿があった。
普段住むタワマンとは真逆の存在だ。
変な音楽で目が覚めたようだ。
自分の身に何が起こっているのか分からない。
とりあえず洗面所に向かう。見慣れない光景が広がっている。
悪夢なら覚めてくれ。願っても無駄なのだが藁にも縋りたくなる瞬間は人生の中で訪れるのはもはや必然なのかもしれない。
黒茶に汚れた白い滑稽な格好をする若者が足を組んで深呼吸をしている不思議な光景を目の当たりにした。
何かがおかしい、この上ない違和感が自分に襲いかかる。
外へ出る扉を見つけて脱走を試みる。
いざ扉を開けると自分の身に覚えのないふざけた田舎が広がっていた。
しかも先程の格好をした者が何十人もいたので逃げることは不可能だと悟った。
逃走はできずともせめてもの状況把握が必要だった。
若い者から当職よりも明らかに年上の者までさまざまだった。男性も女性もいてやっていることはバラバラのようだ。
まるでもって訳が分からない。
ぼうっとしていると突然準備が出来ましたよと声がかかる。
拒否することもできずに若者が誘導する場所へ向かう。
そこは地獄のような光景。
普段神戸牛を朝から堪能する当職には考えられないお粗末な食事が用意されていた。
不思議なことに地獄は数分で終わったようだ。
当職は最高権力を獲得したことを確信した。確信は少し嘘かもしれない。確定だ。
当職は喉から手が出るほど欲しかったものが望む形とは少し違うけど手に入ったのだ。
素晴らしい日々。
みんな当職に従順に従ってくれる。
逆らう者は周辺には誰もいない。逆らう者は国家だけだ。
国家も当職のものにできる、そう感じれるようになったのはたった数日前からだったはずなのに遙か昔の記憶のように思える。
弁護士だろうが医師だろうが官僚だろうが関係ない。
当職に楯突く者は皆敵だ。早急な処分だ。
堅苦しく熱苦しい信頼、名誉、地位、資産。必要なのは修行だ。
修行が世界を変える。
そう信じて日々修行に励む毎日が始まった。
それは3ヶ月前の話。
不思議な話を1つ紹介しよう。
それは自分の知人がある日を境に失踪した話。
数日前の出来事なのでまだ鮮明に覚えている。
彼はセミナーに呼ばれていたので事務所代表の付き添いということで自分も近くの席にいた。
セミナーの内容は関係ないので割愛する。
ではまた明日。といい自分は先にタクシーに乗って帰宅する。
これが彼との最期の会話となる。
彼はどうやら会場の司会の女性とずっと話していたらしかった。セミナーに関係する話ならいいのだが如何せん女性との付き合いは専門外のようで、単刀直入に言えば下手なのである。
その日心配なのはそれだけだった。
次の日、自分は定時に出勤するがそこに彼の姿はない。
ストーカーされるのを恐れて朝早くから事務所に顔を出す彼としては珍しい光景だった。
その日は待っても待っても彼の姿はない。
電話をかけても非通知設定にされているので彼に繋がることはない。
昨晩彼と喋っていた女性弁護士にも電話するものの、繋がらない。
もう一人の出演弁護士のいる事務所にかけても繋がらない。
事件性を感じて警察にも電話したが、家出したい気分なんですよーって適当なことを言うだけで取り扱って貰えない。
現状はこんなところ。
前触れもなくくれた彼。同時に昨日お会いした方達とも繋がらない七不思議。
不穏な香りがするけれど弁護士は冷静さが求められると彼が言っていたのを思い出して可能な限り冷静さを保つ努力をする。
恩師の死が脳裏を過る、冷静でいられるわけがなかった。
過度なストレスと疲労からか、帰り道倒れてしまったようだった。
アスファルトに強く叩きつけたときに発生する鈍い音が響くのを最期に涅槃を目指すようになったらしかった。
弁護士ドットコムから初めて大きな仕事がやって来た。
司会のお仕事だ。
業界では有名な2名の弁護士による業務妨害に関わる事案について語るというオンラインセミナー。
オーラが違う。私とはまるで違うステージにいるような存在感。
弁護士とは思えない、まるで芸能人のように光り輝いて見える。
緊張したものの、大きな失敗はせずにセミナーは終了した。
彼は寡黙な人であったのだが、ひしひしと愛情を感じることができた。
正に一流弁護士としての振る舞いだろうって感じた。
私も彼のような弁護士になれたらいいなって憧憬の念を抱いた。
彼はその日を境に失踪したと聞いた瞬間身が震えた。
彼の身に何が起こったのだろうか。
想像するだけでも恐ろしい。
現実からそっぽ向くことしかできない。
そわそわして仕事に気が入らない。
深呼吸するために一旦外の空気を吸おうとする。
近くの公園でリラックスして事務所に戻ろうとしたら背後から衝撃が走った。
その時目の前が真っ暗になった。
だがそれも案外悪くない。とりあえずやってみるものなのだなとまた彼から教わる。
風の噂で聞いたのだが、もう一人セミナーに参加した弁護士が突如消えたらしい。
フォロワーから教えられて初めて知った。
言動がおかしい人だったからそういう気分になっただけだろうって思った。
器の大きい人だとは思ったが、終始当職は悪くないっていかにも被害者アピールばかりしていた。
所詮はそんな人なんだなって思った。
弁護士の中ではかなりの有名人。それも悪い方で。
炎上を売りにする言ってしまえばどうしようもない弁護士。
実績で持ち上がることをせずに甘い蜜を吸って上り詰めた地位に何の価値がある。
嫉妬でも侮蔑でもない感情が湧いてくるのだが、はっきりした形をもたない。
後で後悔することになるのは先の話。
生命の危機を実感することが何回あったことか。
都合のいいことだけを耳に入れて耳障りの悪い事を言う人には厳しくする。
どこかで聞いたことのある話だ。
他人を自分を磨く道具にして養分を吸い尽くすモンスターが辿る顛末は想像に容易い。
現代にこのような供述が残っているのは縁の下の熱心な人間による努力の賜なのである。
世界がどうなろうがこれだけは失われてはならないのである。
タイトルについて
この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。
この作品について
弁護士が受けた100万回の殺害予告~突然訪れる危機を回避する方法~のセミナー開催を受け、その日の夜のうちに投稿された作品である。