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「恒心文庫:エリカ様」の版間の差分

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この作品は公開された際タイトルがありませんでした。このタイトルは便宜上付けたものです。
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2021年5月4日 (火) 11:26時点における最新版

本文

エリカ様は素晴らしいお方だ
私みたいな中年男性でも愛してくれる
そんなエリカ様に私は身も心も捧げ尽くしていた
エリカ様の為ならなんでもする
どんな汚い仕事でも喜んで片付ける

ある日ヘマをしてしまい追われる身となってしまった
私はエリカ様にだけは迷惑をかけたくない一心で愛猫すら放置して逃げた
しかしながら最後にエリカ様の顔を見て別れの挨拶をしたいと住まいを訪ねた
そこには若い見知らぬ男がエリカ様と寝ていた
私の中で何かが崩れ落ちた
エリカ様は売春婦だ 私を愛していたのは金の為で私は単なる客の一人に過ぎなかったのだ
そして私の弁護士という肩書きはエリカ様にとっては都合の良いもので
利用価値があったから便利に扱われていたにすぎないのだ

当たり前だ、わかっていたつもりだ、
だが私はどこかで淡い期待を抱いていた
それが完全に砕けてしまった今、全てがどうでもよくなった
私の中で何かが壊れた
気がつくと手に血まみれのナイフを握りしめ
床にはエリカ様と男が血だまりの中転がっている

その夜私は行くあてもなくボート漕いで海を進んでいた
空を眺めるといつかエリカ様と一緒に見た星が浮かんでいる
星よりも歓楽街のネオンよりも、エリカ様はいつも輝いていたんだ
昔の事を思い出す、私がエリカ様に抱いていたのは崇拝や憧れなどではなかったのではないか?この感覚は一体?
あぁ、あれはきっと恋だったんだなぁと私は星空の下で声を上げて泣いた

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